危機にこそ活きる「進捗の法則」

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危機をチャンスに変える、というのは必ずしも、一発逆転を期すことや大規模な新規プロジェクトを始めることではない。マネジャーはまず、社員の小さな前進を支援し、個人と職場に日々の進捗のサイクルを生むことに努めてはどうだろう。


 昨今の市場の混乱はあまねく人々の懸念を呼んでおり、なかにはパニックに陥る人もいる。だが、多くの危機がそうであるように、この経済危機も企業に脅威と好機の両方をもたらしうる。

 残念ながら多くの経営陣はこれを脅威ととらえ、財務状況のみに関心をと奪われ、社員には気を配らなくなっている――事業の成否を握るのは、社員たちだというのに。人は脅威にさらされると、思考が硬直化するものだ。経営者はもともと短期的な収支にとらわれがちであるが、危機に瀕するとこの傾向はますますひどくなる。

 この脅威が組織全体のパフォーマンスに及ぼす被害は深刻だ。我々の研究は、社員がみずからの仕事の進捗を定期的に認識していないと、組織内に悪循環が根づいてしまうことを明らかにした。日々の仕事で、前進を阻む障害――たとえばサポートチームの不備によって、必要な設備や情報が得られないなど――にたびたび直面すると、人々は不信感をつのらせ、組織を否定的に見るようになる。そして内発的動機(好奇心や関心など、その個人の欲求によって生じる動機)は消え失せる。

 このような乏しいインナー・ワーク・ライフ(感情、モチベーション、認識の相互作用)は、生産性と創造性の両方を低下させる。達成する仕事の量は減り、その内容には不満が残る。進捗を阻む障害を誰かが取り払わない限り、この悪循環は致命的になりうる。

 実際に我々が調査したいくつかの企業では、こうしたことが起きていた。あるリーダー企業のプロダクト・デザイナーは、我々が依頼したeメール日誌の中で次のように記していた。「わが社はもはやイノベーションのリーダーではなく、追随者になってしまった」。その後、この企業は驚くほどの早さで業界リーダーの地位を失い、規模の劣るライバルに買収されてしまった。

 では、経済危機が組織にもたらす好機とは何だろうか。我々の調査によれば、悪循環が根づく前に、誰かがそれを断ち切るか逆転させることである。目下の経済危機は、深刻な問題に気づかせようとする警報だ。従来のやり方では対処できないと気づいたリーダーは、社員のマネジメントを根本的に考え直そうとするかもしれない。そして企業は、社員の生産性と創造性をかつてなく必要としている。

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