なぜ正しい助言を素直に受け入れられないのか

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豊富なマネジメント経験を持つラインバックが、コミュニケーションにまつわる自身の失敗を述懐する。他者の行動を喚起するためには、ただ提案するだけでは十分ではないという。それ以上に求められるものは何だろうか。


 仕事では、好むと好まざるとにかかわらず、自分の本来の姿を突きつけられる出来事が起こる。あまり歓迎したくはないが、しかしそうした機会は多く必要である。

 数年前のあるミーティングで、私(ケント)もこのような出来事に遭遇した。その日は社外から招いた戦略コンサルタントのプレゼンを聞くために、上級管理職たちが集まっていた。プレゼン終了後、コンサルタントの主導で自社に固有の問題について話し合う機会が設けられた。

 我々の問題は、緊急性は低いものの、重要かつ戦略的意義のあるものであった。会社は設立以来約30年にわたり、優れた事業計画とマネジメントのおかげで大きな成功を収めてきた。私が入社する前の20年ほどは、多大な収益を着実に積み上げ、売上と純利益は毎年実質ベースで12~15%の成長を続けていた。最大の特長は、花形産業ではなくても、顧客の生活を向上させていたことだ。

 しかし、設立から30年が過ぎた頃、つまり私が入社した頃から、何かが変わり始めた。米国では景気が急激に後退し、会社も勢いを失いつつあった。当初は誰もがそれを不景気のせいにして済ませていた。勢いは鈍化していたものの、会社はそれでもまずまずの成長を維持していたからだ。

 私は入社後最初の数年間、社内ベンチャー事業の立ち上げを担当した。事業を軌道に乗せていた私は、会社全体の成長を自分の問題とは考えていなかった。しかし冒頭で触れたミーティングから遡ること2~3年前、自分の新規事業に加えて、より大規模な中核事業の責任者にも任命された。これら2つの事業を合わせた売上は総売上高の約75%にあたり、総利益においてはもっと大きな割合を占める。私は会社が直面する問題(成長の鈍化)と向き合い、会社が進むべき方向性と、そのために必要となる大きな改革について、部下とともに有効な方策(と当時は信じていた)を練り上げた。

 しかし、私の上司であるCEO兼会長や同僚の経営陣を説得するのは容易なことではなかった。物事があまりに長い間非常にうまくいっていたので、ビジネスの抜本的な見直しを誰もが嫌がったのだ。

 会社が直面する問題を誰も理解していないことに、私は始終強い苛立ちを覚えていた。毎週行われる経営会議では毎回のように、私はこの問題をあの手この手で提起し続けた。1人か2人の同僚が同意を示す気配も何度かあったが、どう説得を試みたところで、結局は数人からの相槌を引き出すのが精一杯であった。

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