「分解による統合」という考え方

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 そこで、クワバラのチームはこう自問した――HVACは1つのシステムでなければならないのか。あるいは、V(換気)とH&AC(暖房・冷房)は分けて考えられるのか。もしそれが可能なら、それぞれの最適なモデルが1つのビル内で共存できるだろうか。

「1つのシステムとしてのHVAC」という制約が外れると、素晴らしい可能性が開けてきた。

 冷暖房に関しては最先端の地熱システムを導入した。ビルの地下深くから流れてきた水が天井を貫通するパイプを通っており、その水温は常に摂氏18度に保たれている。これにより冷暖房は最小限に抑えられ、ほとんどエネルギーを使う必要がなくなる。

 換気に関しては、ウィニペグにいつも吹いている南風を活用した。南向きのアトリウム(吹き抜けの空間)を3つ設け、そのうちの最下層の部分で新鮮な空気を大量に取り入れるのだ。やがて「ビルの肺」というニックネームがついたこの3つのアトリウムは、新鮮な空気をビル中に行き渡らせるよう設計されている。空気は底上げしたオフィスの床下にファンで取り入れられ、床に設けられた格子から部屋に供給される。

 外から来る空気の温度が目標値より低い場合は少し温める必要があり、それには小さなファンコイルユニット(空調設備の一種)が用いられる。すると空気はゆっくりと上昇しながら暖まっていき、人やコンピュータの熱が加わり温度が高くなっていく。空気が一番上まで行くと、それは駐車場を暖めるために利用される。

 外から来る空気の温度が目標値より高い場合は、地熱システムで空気を冷やす。だが、この場合には暖かい空気はすぐに上昇し、ソーラーチムニー(煙突)を通じて直接外部に排出される。

 このような仕組みを実現した結果、再循環に頼らず100%新鮮な空気が流れ、かつ非常に効率的なビルが完成し、賞を獲得したのである。カギは「分解による統合」だ。VをH&ACから分離することにより、相反するモデルを同時に両方使えるようにしたのである。

 あなたの戦略計画にも、こうした新鮮な目で見直すべき「V」はないだろうか?


HBR.ORG原文:How to Successfully Manage Opposing Strategies January 27, 2011
 

ロジャー・マーティン(Roger Martin)
トロント大学 ロットマン・スクール・オブ・マネジメント
学長。
著書に『インテグレ―ティブ・シンキング』などがある。

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