不測の事態を切りぬける、3つのステップ

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仕事や人生では、入念な計画が一瞬で無に帰すような出来事が起こる。不測の事態に対する心構えと3つの対処法を、ブレグマンが実際の航海から導き出して紹介する。


 友人のサムは、セーリングを始めて間もない頃、ガールフレンドのロビンを航海に誘った。彼は優れた技術を持っていたが、経験は浅かった。ロビンには、技術も経験もなかった。

 およそ7時間に及ぶ長い航海の計画を立てた彼らは、数日かけて準備をした。地図を作成し、ルートを検討した。万一の場合は陸に避難できるように、沿岸に近いルートを定めた。しかし安全が確保できない工程もいくつかあった。食料と救急用具を買いそろえ、計画したルートを周囲の人々に知らせておいた。

 出発当日、天気は曇りであったが彼らは出航を決めた。数時間後、不運なことに風が強くなり、空に暗雲が湧いてきた。やがて向かう正面、1マイルもしない先に激しい雷雨が迫ってきた。ふたりの四方で雷が響きわたっている。

 しかし、サムは冷静だった。誰もがパニックに陥るような危機の最中に、彼は驚くべき行動を起こす――ヨットを停止させたのだ。船足を落とすために船首を風上に向け、ロビンに向き直り、これからどうするか話し合った。出航地に戻るか、雷雨を迂回していくか、晴れるまでその場で待機するか、雷雨の中を突っ切るか。

 ゆっくり考える時間はなかったので、彼らは早々に話し合いをまとめた。選択肢とリスクを秤にかけ、雷雨の中を突っ切ることに決めたのだ。波は高くなり、ロビンは船酔いに襲われたが、無事に切り抜けることができた。

 後日、彼らと夕食をともにした時のこと。私はロビンに、またセーリングに行きたいか、と尋ねてみた。

「明日にでも」と彼女は答えた。サムのことがとっても好きなんだね、と私は言った。

「ええ、そうよ」と彼女は笑顔で応じた。「でも、それだけが理由じゃないわ。私たちは入念に準備して、雷雨やほかのトラブルに遭遇することは想定していたの」

「トラブルへの対処法も、考えておいたの?」と私は尋ねた。

「いいえ、実はその反対。不確定要素はあまりにも多すぎて、そのすべてに対策を立てておくのは無理だということがわかっていたの。即断即決が必要になることもね」

 彼らに必要で、実際に準備していたのは、対処法がわからないことに遭遇したときにどう対処するか、という計画だ。いざという時に、過信して無謀な行動に出ることを避け、一瞬で賢い選択をする方法である。

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