広告業界の変化を知るための3つのキーワードと
嶋浩一郎のちょっと意外な予測と妄想

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キーワード②BIG DATA
広告業界は「理由」が大事、統計学者は「結果」が大事、だとしたら・・・

 コンビニで缶コーヒーをちょくちょく買う人は、タイ風味のインスタント麺が好きだったみたいな、意外なデータが消費者の購買履歴から読み取れる時代がやってきました。購買データだけでなく、検索情報や位置情報も分析対象なわけで、中央線沿線の学生が夕方買っている商品はこれみたいなピンポイントの分析も可能になってくるわけです。

 グーグルのチーフ・エコノミストが「21世紀の最もセクシーな職業は統計学者だ」っていうのはごもっともです。広告業界の人たちがビッグデータをマーケティング活動にとりいれるのも必然です。ビッグデータによるデータマイニングでいままで予想もしなかったキャンペーンの展開が可能になるでしょう。それこそ夕方の中央線沿線のデジタルサイネージに特定の商品の広告を展開するとか。

 そして、ビッグデータ時代には広告会社の競合環境も変わってくると言われています。電通VS博報堂みたいな構図に、ビッグデータの保持者が参戦できる状況になるわけです。検索エンジンや流通、鉄道会社などが広告会社のライバルになるかもしれません。メーカーがECサイトや商品ファンのSNSを独自に持つことで広告会社以上のデータを独自に持つ時代に突入するのもすぐでしょう。それを脅威と感じる広告業界の人たちもすくなくありません。

 ここで、僕が注目したいのは統計学者と我々広告のプランナーの着眼点の違いです。統計学者が重視するの「結果」です。Aという現象がおきるとBという現象が起きる。この作業を広告業界の人たちは想像でこなしてきました。たとえば、きっと年収1000万以上で高級車に乗っている人は、旅行にいったらこういうホテルにとまりたいに違いないと。しかし、ビッグデータはそれを遥かにしのぐ事実を我々に突きつけてくれるでしょう。広告会社の人たちが想像もしなかった、事実の連鎖、つまり欲望の連鎖が次々発見されるはずです。

 ビッグデータを解析する人は「結果」を重視するわけですが、逆に、広告プランナーにとってもっとも重要なのは、人はなぜそういう行動をとるのかという「理由」の発見です。我々は生活者の観察を通じてその行動の背後にある人々の欲望を見いだすことにたけています。いわゆるインサイトの発見というやつです。

 ある行動の理由の発見は新しい欲望の発見であり、そこに新しい市場が想像できます。セクシーな服を着るアラフォー女性「美魔女」という現象の発見は、より自由に人生を楽しみたいという女性の欲望の発見です。この欲望に応える商品を新たに開発したり、そんな欲望を持っている人たちに対するアプローチのテクニックを考えるのが広告プランナーの仕事です。

 僕は想定外の「結果」を発見する統計学者と、その行動の「理由」を言語化するプランナーがタッグを組むチームが今後広告業界の中でうまれるのではと思っています。統計学者とクリエイターは競合というより協業関係になって行くと思うのです。PARTYがテクノロジストを内包するクリエイティブエージェンシーとして注目されました。今後、統計学者を内包するクリエイティビティエージェンシーがうまれるかもしれません。

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