マネジメントは専門職と言えるか

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マネジャーは「プロフェッショナル」と名乗る資格があるのだろうか。言い換えれば、マネジメントは医師や弁護士と同じような「専門職」で、相応の社会的責任を担っているのだろうか。ロットマン・スクール・オブ・マネジメントの学長であるマーティンはこれを否定しながら、マネジメントのプロフェッショナル化をビジネススクールが果たすべき課題と位置づける。


 リチャード・バーカーは、ハーバード・ビジネス・レビューの2010年7-8月号に掲載された論文”No, Management is not a Profession”(邦訳は本誌2011年3月号「マネジメント教育の真の役割」)で、興味深く重要な指摘をいくつも行っている。私は彼の見解に大いに共感している。マネジメントは、医師や弁護士のような専門職(プロフェッション)として確立させるのが非常に難しい、という彼の意見にも賛成だ。

 バーカーの意見は「真の専門職の証し」である知識の非対称性を根拠としている。言い換えると、専門職であるためには、訓練されたごく少数の人々だけが持ち得る知識を有している必要がある、ということだ。たしかにそれも理由のひとつだが、私は専門職の要件を規制との関連で考える。

 買い手が品質を事前に判断できず、失敗した時のコストが大きい場合、取引に注意が必要である。こうした状況では規制が生じやすい。航空機運航の安全性、医薬品の認可、食品検査、深海掘削などである。そして、このような状況下で、特定可能な個人によって製品やサービスが提供される時、それは規制を受ける専門職となる傾向がある。医師は規制を受ける専門職だ。なぜなら、医師が大失敗をしたら人々が死亡し、その失敗が誰の責任なのかはっきりわかるからだ(あるいは、わかると我々は思っている)。

 これとは対照的に、保険の販売員は専門職だとは考えられない。間違いが起こっても(将来において、保険請求に応じられるだけの資本を準備していなかったら)、その責任を問われるのは保険会社であり販売員ではない。保険販売員には一定の訓練が求められるが、資本と流動性に関して規制の対象となるのは保険会社である。

 失敗のコストが大きければ大きいほど、それを担当する個人の仕事が規制を受ける専門職となる可能性は高まる。そしてざっくりと言うと、規制の対象とならない職業にはどんな時も、ほぼ注意関心が向けられない。かなり以前、私が勤めていたコンサルティング会社は、健康領域の規制について幅広く検討を行うよう委託を受けた。ここで大方の想像は、そのプロジェクトを担当するパートナーに対して、多くの医療関係の職種の人々が「規制に含めないよう提言してほしい」とロビー活動を行うことだろう。しかし、実際はまったくその逆だった。次から次へと、専門職として認められたい職種――指圧師からヒーリング・セラピストまで――がオフィスにやって来ては、なぜ自分たちの職業が規制されるべきかを説いていった。彼らはみな、自身の職種を真摯に受けとめてもらいたいと望み、規制がそのための切符になると考えたのだ。

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