【名著拝見】『ブルー・オーシャン戦略』
第1章 ブルー・オーシャンを生み出す(その2)

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最も影響力のある経営思想家「Thinkers50」第2位、W.チャン・キムとレネ・モボルニュの世界的ベストセラー『ブルー・オーシャン戦略』の第1章を抜粋・紹介する本シリーズ(全5回)。第2回は、ブルー・オーシャンを生み出すことの恩恵――利益と売上高がいかに伸びるか――についての項を紹介する。

 

ブルー・オーシャンをたゆまず切り開いていく

「ブルー・オーシャン」という言葉自体は聞き慣れないだろうが、新しい市場はいつの時代にも存在した。そして、過去から現在にいたるまで、産業界の大きな関心事でありつづけている。100年前には今日の産業のうちいくつが未知のものであったか、考えてみていただきたい。実は、自動車、音楽レコーディング、航空、石油化学、ヘルスケア、マネジメント・コンサルティングといった身近な産業は、いまだ誕生していないか、あるいは産声を上げたばかりだった。ではもう少し最近、30年前を振り返ってみると、この30年間に数十億ドル規模の産業がキラ星のように生まれたことがわかる。投資信託、携帯電話、ガス火力発電、バイオテクノロジー、ディスカウント・ストア、宅配便、ミニバン、スノーボード、コーヒー・バー、家庭向けビデオほか、実に多数の事例が思い浮かぶ。わずか30年前には、このどれ1つとして産業と呼べるほどの規模ではなかった。

 次に、これから20年先─いや、50年先でもよい─に思いを馳せ、そのころには未知の産業がどれくらい生まれているかを想像していただきたい。かりに、未来を予測するうえで過去の実績が参考になるとすれば、やはりそのころには数多くの新しい産業が生まれているはずである。

 どの産業もけっして歩みを止めはしない。それが現実である。たゆみなく進化を遂げていくのである。業務オペレーションは改善され、市場は拡大し、新規参入者が現れては消えていく。歴史を振り返ってわかるのは、新しい産業を生み出す力、既存の産業を再生させる力は、あまりに過小評価されてきたということである。事実、アメリカ国勢調査局がかつて定めた標準産業分類(SIC)は、半世紀後の1997年に北米工業分類(NAICS)に取って代わられた。この間に新しい産業が誕生したのを受けて、SICでは10だった産業分類が、NAICSでは20に増えている(5)。サービス産業だけをとっても、旧来はひとまとめだったものが、NAICSでは情報産業、ヘルスケア、社会福祉など7分野に枝分かれしている(6)。そもそもは標準化のために継続性を重んじて制定された産業分類が、このように変化した事実からも、ブルー・オーシャンがいかにすさまじい勢いで広がってきたかがわかるだろう。

 にもかかわらず、戦略論はレッド・オーシャンでの競争を何よりも重視してきた。というのも、企業戦略は兵法に根ざしていて、いまだに兵法の影響が色濃く残っているからだ。実際、戦略分野の言葉には軍隊用語があふれている。「本社(本部)」には最高経営「責任者(将校)」がおり、「最前線」には「平社員(一兵卒)」がいる、という具合に。このような表現にも見られるように、戦略とは一定の限られた土地をめぐって敵と向き合うことを意味する(7)。ところが産業史をひもとくと、ビジネスの世界では戦争とは事情が違い、市場領域はけっして一定ではないとわかる。それどころか、ブルー・オーシャンは絶えず生み出されてきた。このように、レッド・オーシャンに焦点を当てると、「領土が限られているため、敵を打ち負かさないと繁栄できない」という、戦争を引き起こす制約条件を受け入れて、競争のない新しい市場空間を創造できるという産業界の強みを否定してしまうのである。

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