ピカソが教えるイノベーションの要諦

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イノベーションに関する教訓を箇条書きにしていけば、膨大な量になるだろう。アンソニーはこれを4つの教訓に要約し、彼流の「ラシュモア山」になぞらえ偉人と結びつけて示してくれる。


 ほかのコンサルタントと同じように、私もイノベーションのベスト・プラクティスを説明するために106枚のスライドを利用していた。しかしこれは、消化するにはあまりにも多すぎる。そこで分量を減らして、4つのポイントに絞ってみた。各ポイントはそれぞれ特定の人物に関連づけてある――いわば「イノベーションのラシュモア山」だ。この記念碑のイメージを適用することで、イノベーションの広範で複雑な分野を総合的に表すことができ、また拙著The Little Black Book of Innovation(イノベーションのアドレス帳)の第3章の骨子にもなった。

 イノベーションのラシュモア山は、建造時のオリジナルメンバーは以下の4人であった。

1. A・G・ラフリー
 元プロクター・アンド・ギャンブル会長兼CEO。「お客様はボス」という決まり文句は、イノベーターに常に外からの視点を取り入れることを促してくれる。市場に出て、顧客のことを顧客自身よりもよく知るために時間を費やすのだ。

2. ロバート・N・アンソニー・シニア
 会計の殿堂(オハイオ州立大学にある)に名を連ねる、私の祖父である。彼が著した教科書の古典Essentials of Accounting(会計学の基礎)は、ケイパビリティというものが両刃の剣であることをイノベーターに教えてくれる。どんな強みにも、それと表裏一体の弱みがある。新たな成長を求める企業は、コア事業の衰退による危機を視野に入れ、これを避けるために組織体制と行動を見直す必要がある。

3. トーマス・A・エジソン
 伝説の発明家。イノベーションとは学問的研究ではなく実践的な活動であることを、たとえば次のような印象的な言葉とともに強調する。「天才は1%のひらめきと、99%の努力からなる」

4. マイク・タイソン
 偉大な哲学家、プロボクサー。一見完璧な計画をつくることに過剰にのめりこむ危険性を、次の言葉でイノベーターに教えてくれる。「誰だって試合運びを考えている。顔面にパンチを食らうまではな」

 イノベーションのラシュモア山を最近訪れた人は、少し顔ぶれが変わったことにお気づきだろう。

 

 

 まず、エジソンの顔が解体され、パブロ・ピカソに替わった。エジソンとタイソンの教訓は結局、似たようなものであったが、私のラシュモア山には、ひらめきを実用的なアイデアに落とし込む手がかりが欠落していた。スペインの偉大な芸術家ピカソはこの点を、こんな言葉で補足している。「優れた芸術家は模倣するが、偉大な芸術家は盗む」。イノベーターは時に、何か困難なこと、あるいは過去に誰もしなかったことをすれば評価される、という勘違いを犯してしまう。だが覚えておいてほしい。イノベーションとは、独創的な方法で「インパクト」をもたらすことである。ピカソの顔は、インパクトへの最短距離を見つけることを教えてくれる。

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