【田端信太郎氏インタビュー】
広告は「枠」の発想から変われるか

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従来のメディアが勢いを失ったいま、広告はどのように変わるのであろうか。まず広告枠の概念がなくなるというのは、『MEDIA MAKERS』の著者、田端信太郎だ。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの7月号(6月10日発売)に「広告の新しい現実」というタイトルで執筆いただいたのを機に、転換期を迎える広告の課題について聞いた。

 

広告に「枠」という概念がなくなる

従来のメディアが勢いを無くし、ネットに人が流れています。こんな中、広告はこれからどのように変わるのでしょうか。

田端:そもそも「広告とは何か」から考え直さないといけないですね。

田端信太郎氏
(たばた・しんたろう)


LINE株式会社 執行役員広告事業グループ長。1975年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートにて「R25」を創刊。その後ライブドア、コンデナスト・デジタルなどを経て。2012年6月より現職。現在は、LINEやNAVERまとめ、livedoorの広告マネタイズを統括している。著書に『MEDIA MAKERS〜社会が動く「影響力」の正体』(宣伝会議)がある。

 企業の広告費に付き物の言葉として「予算消化」があります。事前に年間予算が決まっていて、それを年度末までに消化しないと行けない。で予算は、メディアの枠を抑えるために使われるわけです。つまりメディアの枠が希少だったからなんです。でもネット社会になって、いまは枠の希少性は完全になくなりました。この状況に合わせて、発想を変えないといけないんです。

「枠の希少性」ですか?

田端:たとえば、東芝は『サザエさん』や『東芝日曜劇場』をタイムで1社提供し、パナソニックの前身である松下電器は『ナショナル劇場』の1社提供を、それぞれ何十年にも渡り継続してきました。それが、東芝は1998年に『サザエさん』の1社提供から降り、今年になってパナソニックが『ナショナル劇場』の後枠である『パナソニックドラマシアター』の1社提供を降りることになりました。

 1社提供というのは、その番組の枠を全社で買い取って、その中で事業ごとに枠を配分していくことです。つまり、テレビ局の数は数社しかなく、そこから、希少なゴールデン枠を確保することが重要になり、そのためには規模の大きな会社が全社でその枠を買い取ることで、一定の成果が期待できました。そこで企業の広告宣伝部は、本社部門として与えられた宣伝予算を使い「枠」を買い取り、事業部に配分していきました。

 しかし、21世紀になって、ちょうど東芝がサザエさんの1社提供を辞めたあたりから、ゴールデンタイムにテレビCM枠に自社の広告を流してさえおけば、マーケティング・コミュニケーション活動の大半が済んだ、と言えるような牧歌的な時代は完全に終わりを告げたと思うんです。

 インターネットの登場以来、この「枠」の希少性はなくなり、メディアの希少性もなくなりました。いまや人は自分の価値観や好みで好きなようにネットで情報を得ています。

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