日本の俳句に見るイノベーションの源泉

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ハーバード・ビジネススクール教授のテレサ・アマビールと、心理学者スティーブン・クレイマーのコンビによる連載をお届けする。第1回は、創造性について。本当は資源に不足していなくても、イノベーションを促進するためにあえて「人為的な資源不足」を強いる――こうしたやり方は、イノベーションを頓挫させる。創造性を引き出すのは「不足」ではない、と断じるふたりは、創造のカギを日本の俳句に見出す。


 イノベーションを再び重視し始めた企業には、喝采を送りたい。しかし、イノベーションへの認識を新たにするのはよいのだが、プロジェクトに十分な経営資源を投入しないマネジャーがいる――資源の不足が画期的なイノベーションを促進すると信じているのだ。時として、手段の不足が創造性を高めることもあるだろう。しかし、資源に窮しているイノベーターこそがイノベーションを生み出す、というのはマネジャーの危険な思い違いである。

テレサ・アマビール
(Teresa Amabile)

ハーバード・ビジネススクール(エドセル・ブライアント・フォード記念講座)教授。ベンチャー経営学を担当。同スクールの研究ディレクターでもある。

スティーブン・クレイマー
(Steven Kramer)

心理学者、リサーチャー。テレサ・アマビールとの共著The Progress Principle(進捗の法則)がある。

 電子インクのケースを考えてみよう。この記事を読んでいる大多数の読者は、この24時間以内に、アマゾンのキンドルなど何らかの電子インクのリーダーを使っていたのではないだろうか。電子インクが誕生した経緯は、「必要は発明の母」の言葉を残したプラトンの共感を呼ぶにちがいない。アイデアが生まれたのは不足からではなく、満たされていないニーズが創造力を刺激したからだ。電子インクの考案者で物理学者のジョー・ジェイコブソンは、ある日ビーチでのんびり読書をしていた。手元の本を読み終わると、もう読むものがないことに気づいた。日はまだ高く、長い午後をやり過ごすための読み物がない。この瞬間にジェイコブソンは、電子書籍のインスピレーションを得た――軽量で薄く、ボタンに触れれば本や新聞を丸ごと電波で受信する。ボタン1つで別の本や新聞を表示できる。バックライトを使わなくても、直射日光の下でどんな角度でも文字が読める。だから画面を表示しても電力を消費せず、重いバッテリーは不要だ。このアイデアが実際に製品化されて何年も経った現在でも、まるで魔法のように思える。

 人々の生活を変えたこの発明で注目すべきは、ジェイコブソンにはいかなる人為的な不足も制限も強いられなかったということだ。これはダクトテープだらけの自宅ガレージで生まれた発明ではなく、MITメディアラボの資源と、ベンチャー企業Eインクの運営資金1億5000万ドルを要するプロジェクトであった。

 Eインクが例外というわけではない。現在、世界で最も裕福なテクノロジー企業であるアップルとグーグルは、驚異的な製品を世に送り続けている。ビジネスウィーク誌とファストカンパニー誌はともに、この2大企業を「世界で最も革新的な企業5社」に選出した。そして今の中国では、好景気と政府の支援に支えられ、イノベーションの勢いが加速している。

 そうなると、イノベーションに関しては資源が多ければ多いほどよい、ということだろうか。否、これも的を射ていない。世界最初のPDA(携帯情報端末)の開発に成功したパーム・コンピューティングは、ニュートンで失敗したアップルに比べずっと小規模で少人数の企業であった。

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