企業変革の2つのモード(その7)
変革を困難にする条件が全部そろっていた
ジャック・ウェルチのGE

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 戦略転換による企業変革の難しさについて話してきた。企業変革の本質は創造的破壊にある。創造と破壊はまるで違う方向を向いた仕事だから、聞いた瞬間に変革が容易でないことは容易にわかる。前回は創造と破壊の両立の困難を、ポジショニングと組織能力という2つの戦略の論理と重ね合わせて説明した。

 この2つの論理は、相互に対照的な戦略思考に立脚している。破壊を意図したリポジショニングの思考が支配的になると、組織能力の再構築による創造に手が回らなくなる。逆に、腰を据えて組織能力を創っていこうという構えで経営すれば、リポジショニングのための大胆な意思決定に目が向かなくなる。だからリポジショニングと能力再構築をいずれも必要とする創造的破壊は難しい、というのが前回までの話だった。

 リポジショニングと能力再構築の折り合いをうまくつけて創造的破壊に成功したという事例は非常に少ない。この先しばらくは、戦略転換による企業変革の古典的な2つの事例を対比させる形で議論を進めていくことにする。ひとつはジャック・ウェルチによるGEの20年がかりの企業変革(1981-2001)、もうひとつは同時期に起きた1980年代のインテルのメモリー事業からマイクロプロセッサーへの戦略転換だ。

 いずれも古い話で、企業変革の代表的事例としてこれまでも何度となく語られてきた事例である。しかし、創造的破壊の観点からこの2つの事例を比較してみると、見過ごされがちだったいくつかの重要な論点が浮かび上がってくる。

 ジャック・ウェルチによるGEの改革から見ていこう。1981年にCEOに就いたウェルチは、次から次へとGEを変革する大胆な意思決定を繰り出した。20年後に彼が退任するときのGEは、よく言えば洗練された経営システムで粛々と動いていく安定志向のコングロマリット、悪く言えば官僚的で動きが遅い内向きのかつての「出来上がった会社」から、やたらと筋肉質で意思決定が早く動きも速い攻撃的な企業グループに180度変わっていた。

 退任時に出版されたウェルチの回想録『わが経営』は「チェンジ・マネジメントの教科書」として世界中でベストセラーになった。この本を読んだ記憶のある方も多いと思う。これ以外にもウェルチのGE改革について研究した本が多数出版され、2000年前後のジャック・ウェルチは企業変革のリーダーシップのアイコンの感があった。これほどまでに劇的な企業変革の事例はその後も稀であり(この辺、企業変革がいかに難しいかを示している)、チェンジ・リーダーとしてのウェルチの名前はいまだに色あせてない。2001年からGEのCEOを引き継いだジェフリー・イメルトも、就任して10年以上にわたって着実に成果を積み上げてきた優れた経営者であることは間違いない。しかし、「企業変革」という観点からいえば、イメルトの経営は前任者のウェルチがつくったインフラと路線を引き継いでいる色彩が強い。もちろんイメルトも競争環境の変化を受けてさまざまな改革に手をつけてきたが、その多くは「ウェルチ路線の修正作業」であり、非連続的な企業変革のリーダーとしてはウェルチに遠く及ばない。

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