企業変革の2つのモード(その6)
ポジショニングと能力のトレードオフ

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 これまでの話の主線を確認しておこう。新しい何かを創るだけでは会社は変わらない。これまで連綿と続いてきたものをどこかで断ち切る必要がある。企業変革の本質は創造的破壊にある。ところが、創造と破壊は逆向きのベクトルだ。これを組織能力とポジショニングという2つの代表的な戦略思考と重ねて考えてみると、創造的破壊の難しさを理解しやすい。

 何かを創っていくためには粘り強い組織能力の戦略思考が求められる。これに対して、破壊を得意とするのはポジショニングという思考様式だ。ところがこの2つの戦略思考は、往々にして「あちらをとればこちらが立たず」という関係になりやすい。

 ポジショニングが破壊を得意とするのは、それがそもそも「何をやるか」よりも「何をやらないか」についての意思決定を問題にしているからだ。大前提にあるのは利用可能な資源の制約である。そもそも投入できる資源が無尽蔵にあれば、すべてをフルスロットルで「やる」ことができる。しかし、現実には資源の制約がある。あらゆることに手を出せば、何もモノにできなくなる可能性が高い。だから、まず何を「やらない」かをはっきりさせる。逆に言えば、資源制約がない人には、そもそも戦略的な意思決定は必要ない。

 前にも話したように、「違いをつくる」、これが(競争)戦略の根幹にある考え方だ。北に行こうとしている人がいる。それに対して、われわれは南に行く。ようするに違いをつくっているわけだが、ここで「南に行く」ということは「北には行かない」(「東にも西にも行かない」)ということを意思決定するのに等しい。みんなが北や東や西に行こうとしているなかで、そっちには行かないと決める。だから違いがはっきりする。これがポジショニングの戦略の基礎にある考え方だ。

 こういう思考様式には、はじめから「破壊」の論理が組み込まれている。ポジショニングの変更(リポジショニング)は、「もうこういうことはやめよう」「こっちをやめて、これからはあちらに行こう」という意思決定をするということだ。これはすなわち、破壊の対象をはっきりさせることに他ならない。ポジショニングという思考様式は、戦略転換にえいやっと踏み切るのに適しているのである。

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