第3の思考法「アブダクション」で経営は変わる

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エコノミストと経営陣が予測を誤り続ける原因として、戦略の大家ロジャー・マーティンは「定量分析に終始し、定性面を無視しているため」であるとしている。測定可能なものへの依存を強く戒めているのだ。測定に代わるものとしてマーティンが提案するのは、仮説的推論、つまり「想像」だ。


 優れた経営と優れた測定には密接な結びつきがある、という見方は根強い。「測れないものは意味がない」「測れないものは管理できない」「測れないものは実現できない」――こんな言い回しをよく耳にすることはないだろうか。こうした言葉が好まれるのは、心地よく響くからだ。何かを測定することで、人は安心感を得る。対象を測定できるほど詳しく知っているということは、対象をある程度コントロールできているということだからだ。

 だが、測定可能な物事への依存がいくら心地よくても、それは重大な過ちを生むリスクをはらんでいる。さらに、「何を知らないか」を把握できないため、見失っているものがわからなくなる。測定可能なものだけを頼りにしていると、我々は小さくて窮屈な世界をイメージするようになる。その世界で我々は「現実」に囚われるが、その現実とは我々が意図せず自分の周りに築き上げてしまった牢獄にすぎないのだ。

 19世紀終盤から20世紀初めにかけて活躍したアメリカのプラグマティズムの哲学者、チャールズ・サンダース・パースは、「世界の新しいアイデアのなかには帰納法や演繹法の論理で生み出されたものはない」ということを初めて指摘した。過去を分析し、既存の数字を計算して将来を描こうとしても、それは過去を基準にした推定以上のものにはならない。したがって、すでに測定可能なものを測り続けても、過去と異なる未来を創造することはできないのだ。

 既知のデータのみに基づいて意思決定をする組織が上手くいくのは、将来が過去と驚くほど類似ししている場合である。そうでなければ、よくないことが起こり始める。ある組織が過去と同じような未来を捉えている場合、未来が大きく変化したら、その組織は時代遅れとなってしまう――モトローラやGMのように。

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