もはや業界分析は有効ではない?

マグレイスはHBR2011年1-2月号のインタビューで、崩壊の危機を免れ安定している業界は石油・ガス業界、および消費財関連の一部の業界ぐらいであると述べている。異業種間の競争が激化し、新規参入の障壁が低くなるにつれ、従来の「業界」の定義にとらわれないビジネスモデルがますます必要になるだろう。


 企業間の業績の差は、その企業がどの業界で競争しているかに起因する――これは戦略における定説のひとつである。5つの競争要因、BCGのポートフォリオ・マトリクス、SWOT分析など、我々が信頼を置くツールの多くはこの前提に基づくものだ。

 業界は確かに重要な要因だ。しかしその重要性と影響力は、我々の既成概念とは異なるかたちで働いているのではないだろうか。このことを示唆する証拠は多い。私が最近目にした例のひとつとして、コンサルティング会社のアクセンチュアが発表した「アグリゲーション(統合)の時代」という提案がある(日本語のドキュメントはこちら)。グローバル企業が成長と収益性を維持するためにますます大きな市場を必要とする一方、多くの業界で市場セグメントの細分化・縮小化が進んでいる、というパラドックスについて同社は考察している。細分化されたプロフィット・プールを統合するのは、数千もの浴槽の水を1つにまとめようというようなものだ。どのような方法で統合し、利益を確保すればよいだろうか。

 さらに、これも同社が指摘しているが、多くの企業はまったく異なる業界の企業との競争を強いられている。ネットフリックスは独自のテレビ番組を制作している。ベスト・バイは医療サービス業界向けに高度な分析を行い、心臓病治療プロジェクトの進展具合を明らかにする。このような展開を誰が予測できただろうか。

 このような変化が多くの混乱を生むのは、想像に難くない。我々が分析や組織運営に用いるツールには、業界という枠組みがしっかり組み込まれているからだ。たとえば、コンサルティング企業やサービス企業の多くは「業種別」の概念を軸に構成されている。アナリストは特定の業界に絞って専門知識を蓄積する。人々は1つの業界で長年の経験を積んできたことを誇りとする。残念なことに、あらゆる業界で決定的な落とし穴が生じるプロセスもこれと同じである。音楽やビデオ、出版の例を見れば明らかだ。いずれデジタルカメラも同じ運命をたどるだろう。日常的な画像の共有に必要十分な画質の写真は、携帯電話で撮影できる。わざわざもう1台の機器を持ち歩く必要はない。

 業界という概念を完全に代替するものは、今のところ誕生していない。しかし今後の展開に注意しておくほうがよいだろう。


HBR.ORG原文 Industry Analysis Is Dead. What's Next? January 19, 2012
 

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