“スーパーテンプ”は日本に根づくか

DHBRの最新号はキャリア特集。その中で紹介されている「スーパーテンプ」という働き方が興味深い。ハイクラス人材がプロジェクト毎に雇われて企業に変革を起こす。こういう雇用形態が日本に根づいたら、大企業の変革も進むかもしれない。


 キャリアを特集した最新号が大変好評です。『ワーク・シフト』のリンダ・グラットンさんや、『採用基準』の伊賀泰代さん、『スタンフォードの自分を変える教室』のケリー・マクゴニガルさんなど、豪華なラインナップであったこともその要因でしょう。

 そんな中で私が非常に興味深いと思ったのは、「スーパーテンプ:ハイクラス人材の新たな働き方」でした。「スーパーテンプ」とは、正社員だったとしても飛びぬけた実力を示すであろう短期雇用者のことです。最近のアメリカでこのようなスタイルで働く人が増えてきたそうです。

 どの国でも、優秀な人は正社員として働き、契約社員として働く人より実力が上だとされるケースが多いもの。ところがスーパーテンプは、正社員では成し遂げることができない困難な仕事を担うために、プロジェクトベースで雇われる人のことです。語学や知財といった専門性の高いスキルを要する人もいますが、ここで注目されるのは、新しい事業の構築や既存の業務プロセスの改革など、非連続な仕事を担う「仕事人」です。彼らは一流の大学を出て、一流企業で経験を積んで、柔軟にチャレンジングな仕事を求めて企業から企業へと渡り歩きます。

 さすが働くスタイルに多様性のあるアメリカです。このような人材が出てきて、さらにこれらの人材を専門に斡旋する会社も登場しているとのことでした。しかし、このような人材や人材マーケットが日本で現れたら、新たな変革のチャンスが生まれるではないでしょうか。

 いまの日本企業の課題は、まさに変革することです。これまでに経験のなかった新興国への進出、デジタル化への対応、新製品や新しいビジネスモデルの開発など、今こそ、二番手ではなくフロンティアとして事業に挑まなければいけません。

 そこで必要となるのがイノベーティブな人材ですが、従来の企業の価値観で育った人の中から適任が見つかりにくいのも当然でしょう。前例や先頭企業をモデルとしてきた企業がほとんどの日本では、リスクを取ってイノベーティブな仕事をする人よりも、堅牢な仕事ぶりで前任者たちが築いてきた事業を継続させる能力が評価されてきました。この評価基準で育った人の中に、ゼロベースの仕事が得意な人が多いとは思えません。

 また一方で、日本企業にとって厄介なのが、終身雇用制と厳しい解雇規制による雇用の流動性のなさです。「必要な業務に応じて必要な人材を外から入れる」というスタイルが簡単に取れないのが現実です。

 そこで日本企業で変革を担う人材として、スーパーテンプは非常に有効に機能するのではないでしょうか。もっとも日本企業にこのような外部のスーパーテンプを使いこなすカルチャーがあるかどうかも議論すべきでしょう。言っている内容よりも、言っている人で物事を判断しがちな日本の組織がこのような人材を受け入れ活用できるか。ここは課題として残るでしょう。

 それでも、スーパーテンプという人材は魅力的です。かつて、サンマイクロシステムズのCTOだったビル・ジョイは、「いちばん優秀な奴らは社外にいる」と言いました。組織の枠に収まりきれない人材を改革の場面で呼んでくる。そんな人材の活用方法と、そんな働き方を志向する人材が出てきたら、日本企業の変革も進むように思えてなりません。(編集長・岩佐文夫)
 

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