「環境リーダーシップ」が未来を拓く

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人々が環境負荷について真剣に考え始めたのは、比較的最近であるとゴールマンは言う。サステナビリティの取り組みで他をリードする企業でも、「エコの力」で市場を圧倒するまでには至っていない。つまり今なら、サステナビリティを先行優位にまで高めることができる。そのために必要となるのは、超長期的視野を持つリーダーであるとゴールマンは述べる。


 ビジョンを持つリーダーは、長期にわたって重大な影響をもたらす壮大な課題に取り組む。どれほど長期なのか。たとえば、現在のグローバルな経済危機を受けての資本主義の立て直しには、10~20年ほどかかると予想される。しかし、もはや不可避かもしれない地球の生態系崩壊がもたらす脅威は、何世紀も続くだろう。

 生態系の崩壊は、ビジネスリーダーたちにも直接的な影響を及ぼす。これまでの産業基盤や設計思想、化学物質、商習慣などのほとんどは、環境への影響を顧みずに考え出されたものだ。それらの影響を明らかにする産業生態学という学問が誕生してから、まだ10~20年ほどしか経っていない。産業生態学はあらゆる製品がもたらすさまざまな影響を精密に測定するものだ。その主な方法であるライフサイクル・アセスメント(LCA)は、ある製品がそのライフサイクル全体を通して環境や健康(最近では社会も)に及ぼすインパクトを数値化する。

 今日の産業活動やビジネス慣行の大部分は、環境について無知であった時代の産物である。その頃は、環境負荷を測定する方法を誰も持ち合わせていなかった。測定が可能となった今、我々は人工的につくられたほぼすべてのモノについて見直し、つくり変える必要がある。根本的なイノベーションによって、少なくとも環境負荷がゼロの技術を新たに見出さなくてはならない。合わせて、自然への借りを返すような技術も開発できれば理想的である。

 このような改革を実現するには、非効率を排除してコストを削減するというだけの業務慣行をさらに飛躍させ、環境へのあらゆる影響が市場シェア増減の基準となるような市場を創造することが必要だ。そして、ビジネスと産業の最も基本的な部分でこのような変革を推進するには、優れたリーダーが求められる。大胆不敵で、大いなる先見の明があり、人を説得する力とコラボレーション能力に優れ、卓越したビジネスセンスを備えたリーダーである。

 そのようなリーダーなら、市場での新たな力となり始めた「エコの透明性」を活用して恩恵を得られるはずだ。情報システムのイノベーションが進む昨今では、膨大な情報量を持つライフサイクル分析のデータベースを、携帯電話などの個人用機器の画面に表示できるようになっている。これにより消費者は、ある製品の環境負荷について他社製品と即座に比較できる。

 この概念は、最近スタートしたグッドガイドのウェブサイト(GoodGuide.com)で具現化されている。グッドガイドは、200以上のデータベースに基づいて製品の環境負荷を10段階で評価する。消費者がこのサービスを利用すれば、製品が環境や健康、社会に及ぼす影響について他社製品とすぐに比較できる。カリフォルニア大学の環境科学者でグッドガイド創設者であるダラ・オロークは、私にこう話してくれた。「この情報システムは、製造業全体が少しずつ良い方向へ進む機会を提供します。市場を変える大きな力となってほしいのです」

 企業による環境への取り組みを永続的なものにするために、アーススター(Earthster)の開発が進行している。これはLCAの公開データを利用したサプライチェーン管理システムだ。企業はこのシステムによって、環境負荷をどの部分で低減すれば最大の効果を得られるかを特定し、必要な改善に手を貸してくれるサプライヤーを探すことができるようになる。

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