イエスと言わない技術

ナイアはHCLを変革する過程で、マネジャーたちからさまざまな警告や疑念を表明されてきた。その際に使われる枕詞は“Yes, but...”であったという。無分別な「イエス」は変革やリーダーシップにマイナスとなる、という教訓をお届けする。


 学生時代の私は、幾何学の授業で最初に習うピタゴラスの定理の中にある、シンプルだが説得力のある論理に強く魅了された。そしてマネジャーとしての最初のレッスンも、ピタゴラスから教わった。「“イエス”と“ノー”という最も古く短い2つの言葉こそ、最も深い思慮を必要とする言葉である」――深い英知が宿るこの格言を、今でも忘れていない。

 多くの人が、「ノー」と正しく言うのに苦労した経験があるのではないだろうか。私たちリーダーは、否定的な発言によって人々のやる気や自信を損ねたり、取り組みに水を差したりしないよう気をつけなくてはいけないと学んできた。

 しかし私たちは多くの場合、「イエス」もまた、言い方によっては同じ悲惨な結果をもたらすということを忘れてしまいがちである。次の3つの例を見ていただきたい。

「はい、わかっています~」(Yes, I know...)

 子どもはこう言うことで、自分があたかも大人になったような気になる。しかしマネジャーがこのフレーズを発すると、相手に「私は全部わかっているから、あなたの意見はいらない」というメッセージが伝わることになる。こうなると間違いなく、同僚の知恵を得ることができなくなってしまう。

 私は反対に、「いいえ、わかりません」と答えるようにしている。このフレーズは、参加型の組織文化を構築するうえで驚くほど有効である。

「イエスでもあり、ノーでもあります~」(Well, yes ― and no...)

 このフレーズは一見バランスの取れた受け応えであるように見えるが、ほとんどの場合、曖昧な返答として受け取られてしまう。リーダーは、自己主張が強くてポジティブな人物という印象を相手に与えなくてはならない。リーダーシップ開発コンサルタントのスコット・エディンガーは、最近のブログで自己主張を次のように肯定している。「自己主張が強いことが、素晴らしい特性というわけではない。自己主張をすることで、他の多くのリーダーシップ能力も強調できるのだ」(HBRの英文ブログはこちら)。

 私もこれにまったく同感である。自己主張は――強引であることとは大きく異なり――「はい」と「いいえ」を交互に言う曖昧なマネジャーへの処方箋となる。

「そのとおりですが、しかしながら~」(Yes, but...)

 私の辞書では、これはうまくいっていない状況への言い訳をいくつか用意してきた人物が使うフレーズである。

 HCLのCEOに就いて間もない頃、私が大きな変更を提案するたびに、「そのとおりですが、しかしながら~」と言うマネジャーが数名いた。彼らは新しいアイデアに常に反対し、うまくいかないであろう理由をいくつも並べ立てる。このタイプの人々はイノベーションを妨げ、現状を変えるリスクを取ろうとせず、同僚が提案する解決策を信用しない。

 これら3つのフレーズは、「イエス」を上手に言うための技術ではなく、今日のリーダーシップに蔓延する優柔不断な態度を象徴するものである。あなたもそう思うだろうか?


HBR.ORG原文:How Not to Say Yes September 21, 2012
 

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