そこのけそこのけCEO!

CEOではなく従業員を変革の主役とせよ、と強調してやまないナイア。今回は、みずからの信条を人形師の姿に重ね合わせる。裏方や黒子という概念は、変革やイノベーションにおける権限委譲や透明性とは対を成すものなのかもしれない。


 何年も前のことだが、スーラジクンド・メラ(Surajkund Mela)というインドで大人気のクラフトフェアで、非常に珍しい人形劇を観た。人形劇というと、人形師は舞台の裏に隠れ人形が主役を演じるのが普通だが、スーラジクンドの舞台では、観客から完全に見える状態で人形師が人形と一緒に話し、歌い、感情を表現していた。

 拍手喝采のなかで幕が閉じると、うちの子を含むたくさんの子どもたちがステージへと駆け寄っていった。興奮して人形師に話しかける子どもたちの横で、私は座長と思しき人物に話しかけた。「人形師が観客から見えても構わないのですか?」と聞いた私に対する彼の答えは、「すべての仕事をしているのは彼らなのですよ」というものであった。当然のように答えた彼の、このシンプルな言葉は私の心に強く焼きついた。

 組織にとって必要不可欠である従業員のことを、企業が気にかけていないケースがあまりにも多い。経営者に注目が集まるなか、従業員たちの仕事が目立たなくなっている。実際には、大統領であれ、警察官や配線技師であれ、ほぼ誰もが雇われ人なのだ(HCLテクノロジーズの「従業員第一主義」の紹介動画はこちら)。

 従業員が一丸となれば、数多くの問題への革新的な解決策を見出す力が生まれる。しかし私たちは往々にして、スーパーヒーローが現れて魔法の杖のひと振りで世界を変えてくれるのを待ってしまう。

 流れを変えるようなアイデアの中心には、必ず従業員たちがいる――この現実を直視すべきである。昨日と今日を支えた従業員たちが、間違いなく明日をつくっていく。ソーシャルメディアが形づくる新たな世界は、コラボレーションの力で動き、組織階層はいたる所で崩壊してきている。

 これらの変化は、「従業員第一、顧客第二」主義(EFCS)にも顕著に表れている。経営層が牽引し従業員が受け入れるかたちで始まったEFCS運動は、今では従業員が促進し経営層が受け入れるものへと変わっている。革新的なアイデアは現場から生まれ、従業員が企業の社会的責任を果たす中心となっている。それでもなお、ほとんどの企業がこの変化の風に無関心であるように見受けられる。

 今こそ、この変化にCEOたちは注意を払い、古い体制から脱却し、権力と地位を切り離す時である。権限委譲によって従業員自身を変革の担い手とし、いたる所でリーダーシップを発揮させるのだ。こうすればビジネスを変革させる新しい方法が必ず見つかるはずである。

 私たちは脇にどいて、従業員たちに仕事に取りかかってもらおうではないか!


HBR.ORG原文:CEOs, Get Out of the Way! May 1, 2012
 

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