無策こそ、最上の策となりえる

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これから何をすべきか、わからない――卒業、転職、引退など人生の転機を迎える時、こんな不安を抱えることは誰しもあるだろう。先が見えないのは自分の計画不足のせいだ、と自責の念にかられる人もいるかもしれない。しかしブレグマンは、4つの要素さえふまえていれば、将来について無計画でもかまわないという。


 今週末、20年以上前に通っていたプリンストン大学を訪れてスピーチを行った。キャンパスに向かうあいだ、卒業を数カ月後に控えた当時の私が取り憑かれていた悩みを思い出していた。「これから、どうすればいいんだろう?」

 その頃、よい答えが見つからなかった。就職先が決まっておらず、将来の計画もなかった。

 しかし結局、それこそがよい計画だったのかもしれない。

 マーク・ザッカーバーグとそのルームメイトは、コンピュータ・サイエンス専攻の学生だった当時、現実的な計画などなにもなかった。彼らがフェイスブックを立ち上げたのは、ただ面白いと思ったからである。才能を発揮できて、ハーバードの学生や卒業生どうしをつなげる斬新な手段が、たまたまフェイスブックだったのだ。それが4億人以上の会員を擁することになるとは、彼は予想だにしていなかった。そのうえ、収益がどこから来るのかもはっきりわからなかった。しかし彼はフェイスブックをやめなかった。2007年にアプリ開発を外部に解放し、ゲーム開発者がユーザー獲得のためにフェイスブック上の広告枠を買い始めた。これは2004年当時のザッカーバーグの戦略には、まったく含まれていなかったことだ。

 グーグルの創業者ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンも同じだ。1996年にプログラムを書き始めたが、収入源について明確なプランもアイデアもなかった。しかしそれは、やめる原因にはならなかった。2002~2003年になってようやく、アドワーズとアドセンスによって収益基盤ができたのである。

 先週の記事「計画したことに縛られないために必要なこと」の中で私は、計画に対して柔軟性をもつ必要があること、計画に固執するのは危険であることを書いた。でも、もし完全にノープランだったらどうすればいいだろうか。

 学校を卒業する時だけでなく、人生を通して、そんな状況に直面することは誰もがあるだろう。30年近く働いてきた世代は、幸いにも長生きしていれば、第2、第3の人生を迎えている。若い世代は数年おきに転職し、まったく別の業界に鞍替えすることもある。昨日立てた計画は、今日には無意味となるかもしれない。私のヨガの先生は、以前はキャスティング・ディレクターだった。

 無限の選択肢がある状況では、計画を練ることが難しくなる。コロンビア大学ビジネス・スクールの経営学教授シーナ・アイエンガーは、次のような研究を行っている。あるグループには6種類のジャムを購入の選択肢として提示し、別のグループには24種類のジャムを提示した。試食段階では後者のほうが商品に強い興味を示したが、実際に購入した数は前者のほうが多く、後者の10倍だった。選択肢が限られると、人間は10倍も行動を起こしやすいのだ。

 選択肢が多すぎると、人は簡単に惑わされてしまう。たくさんの中から選べず、結局は何も選ばずに終わってしまう。

 それでも人生は続いていくので、「選ばない」という選択を事実上はしたことになる。ある時そのことを振り返り、自分の能力を無駄にしてしまったように感じる。ジャムを1つも買わずに店を出てしまった、というふうに。

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