「根本的透明性」の時代に勝ち残るには

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ダニエル・ゴールマンは『EQ こころの知能指数』で名高い心理学者。Thinkers50による「最も影響力のある経営思想家50人」のひとりにも選ばれている。科学ジャーナリストとしても活躍し、2009年には『エコを選ぶ力―賢い消費者と透明な社会』を刊行している。本連載では主に持続可能性に関する記事を紹介していく。


 経済学の理論によれば、市場の透明性が高いほど、市場はより健全なものになるはずである。情報の非対称性――買い手が入手不可能な重要情報を売り手が持っているという状態――は市場を汚染する。不良資産(toxic assets)がそのよい例だ。

 金融市場では、より透明性が強く求められている。これと並行して消費財市場でも、環境への影響に関する透明性が求められている。さまざまな兆候が示す通り、製品が環境や健康に及ぼす影響に関して市場はますますオープンになっており、この動向はマーケティングに重大な影響をもたらすと考えられる。

 たとえば、2009年に開設されたグッドガイド(GoodGuide.com)のウェブサイトは、200に及ぶデータベースを利用して、環境や健康、社会に及ぼす影響の観点から消費財の評価・格付けを行っている。これにより買い手は初めて、今までは隠されていた環境コストに基づいて製品を比較し、独自に評価できる機会を手にした。グッドガイドは革命の前兆といえる。商品の価値領域を、価格・クオリティーだけでなく、有害性や健全性にまで拡大するからだ。

 グッドガイドが利用するデータベースの中には、製品のライフサイクル・アセスメント(LCA)を目的としたものも含まれている。LCAは、工業生産における数多くの工程の1つひとつについて、環境と健康に及ぼす影響を追跡する方法である。これまでLCAは公開された情報ではなく、一部の人々のみがアクセス可能な知識であった。このデータが公開され製品の比較に使われれば、従来隠れていた環境への影響は、市場で大きな意味を持つようになる。

 根本的透明性(radical transparency)の時代が到来したのだ。根本的透明性は、製品とそれに付随するさまざまな影響――カーボン・フットプリント(二酸化炭素排出状況)、環境への懸念がある化学物質、従業員の待遇など――を結びつけ、売上に影響を与える要因へと変える。根本的透明性は、新しいソフトウェアの機能を利用して収集した膨大なデータを、シンプルな表示に変える。エコロジーに関心を持つ母親は、iPhoneでグッドガイドの無料アプリを使いながら買い物することができる。

 だが、これはまだニッチ市場なのだろうか? この問題に本当に関心を持つ人はどれくらいいるのだろうか。透明性の問題にいち早く着目したウェブサイトであるスキンディープ(SkinDeep)は、マスカラや髪染めなどに含まれる成分を医療用データベースと照合し、美容品の格付けを行っている。自分が使用するベビー用洗浄剤に発がん性物質が含まれているかどうか、シャンプーに環境ホルモンが含まれているかどうかを実際にチェックしている人は、どれくらいいるかといえば――2004年の開設以来、同サイトのアクセス数は1億件を超えている(2009年5月時点)。

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