「知的失敗」のすすめ

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不安定な環境における戦略やイノベーションを研究するリタ・ギュンター・マグレイスは、Thinkers50が選ぶ2011年の「最も影響力のある経営思想家50人」に名を連ねる。不確実な状況下では失敗の確率が高まるが、予期せぬ結果を「知的な失敗」と位置づけ、そこから学習しなければならないとマグレイスは主張する。


 不況期には、人々や企業に思いもしなかった事態が突きつけられる。しかし私が知る限り、そこから導き出される論理的な結論を避けたがるマネジャーが多くいる。不確実な要素の多い環境では、より安定した状況下に比べ、失敗する確率が大幅に高くなる。にもかかわらず、多くの企業幹部は失敗から学ぼうとせず、それをひた隠しにしたり、失敗はすべて計画に織り込み済みなので大したことではない、と虚勢を張ったりする。このような人たちに対して私が訴えたいのは、失敗から学ばなければ、企業にとってきわめて貴重な資源を浪費することになるということだ。

 例外管理(management by exception)の概念を叩き込まれてきた幹部にとっては当然、失敗は絶対に許されないものである。このような信条はさまざまな品質管理手法の普及によって促進された。たとえばシックス・シグマは品質の追求において、差異(つまり失敗)の排除を目指すものだ。マネジャーは常に正しいし、正しい答えを出すことは、小学校でもマネジメントでも同じように大切なことだ、という考え方である。

 それは間違いである。

 私の尊敬すべき同僚であるデューク大学のシム・シトキンをはじめとする学者らは、長年にわたって組織の学びについて研究し、組織が学習し気づきを得るうえで「知的な失敗」(intelligent failures)が不可欠なものであるという結論に達している。失敗は間違った先入観や無駄な投資を教えてくれる。失敗によって、チームのメンバーのうち誰が忍耐力を持って創造的に方向転換を図り、闇雲な猪突猛進を改めることができるのかを特定できる。また失敗は、組織が将来の目標について建設的なかたちで見直しを図れるほぼ唯一の機会でもある。

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