リーダーは、「台風の目」の中から指揮を執れ

CEOが現場の最前線に腰を据える必要性を、ナイアは改めて説く。リーダーの立ち位置を考える時、あの有名なイギリス人探検家を範とすることができる。


 グローバル経済における「シートベルトをお締めください」のサインが消え、CEOたちはそれぞれの危機管理司令部から外へ出た。さて、彼らは新たな決断を下さなくてはならない――組織ピラミッドの頂点に戻るべきか、それとも台風の目の中に留まるべきか?

 前々回の記事「新しいCEO像とは?」 で指摘したように、「価値創造層」は従業員と顧客が接触する現場、つまり最前線へと移っている。遠く離れた場所から指揮を執るだけではもはや済まなくなっている今、CEOは最前線の真ん中に静かな場所を見つけ、そこへ移動すべきである。この考えは私に、世界最高のリーダーの1人に数えられるイギリス人探検家、アーネスト・シャクルトンのことを思い起こさせる。

 誰もが知っている通り、エンデュアランス号が氷塊に囲まれ沈没へと追いやられたため、シャクルトンは南極には到達できなかった。しかし、シャクルトンは窮地に置かれながらも、探検隊を率いて氷点下の氷洋上1300kmを進み、1人も失うことなく生還させるという偉業を成し遂げた。

 探検中、シャクルトンは隊員の意見に耳を傾け、率先して手本を示し、必要に応じて目標を素早く変え、うまくいっていないと思える計画は破棄した。台風の目の中に身を置き、そこから隊を統率したことで、シャクルトンは絶望的な状況からの生還を果たすことができたのだ。

 状況を素早く判断しタイムリーな決定を下す、というシャクルトンの能力は、上記の行動を取ることで研ぎ澄まされていった。他の多くのリーダーと同じように、隊長自身はテントの中に留まりながら、部下を派遣して救助隊を呼びに行かせたならば、結果は違ったものになっていたであろう。

 伝統的に、リーダーは全体を見渡せる頂上から指揮を執ってきた。たとえば、過去の陸軍大将は皆、塹壕の中からではなく高台から戦闘を指揮してきた。しかし、ひとたび粉塵が舞い上がり硝煙が立ちこめれば、高すぎる位置からは地上の動きを把握するのが難しくなる。

 ピラミッドの頂点は、地上の現実や組織のエネルギー発生源から遠く離れている。対照的に、組織の中心部に立ち位置を取るリーダーは、新しい動きに迅速に対応しながら、従業員に権限を与え、励まし、熱意を引き出すことができる。

 人々は台風や竜巻などを恐れるが、嵐の中にはエネルギー、モメンタム、そしてスピードも存在する。このエネルギーを破壊ではなく創造に活かすことができれば、優れた組織をつくることができるだろう。

 ピラミッドは太古の昔から、美しさや優雅さ、権力だけでなく、死をも象徴する存在であったことを忘れてはならない。もし今後あなたが、組織ピラミッドの頂点へと続く梯子を登ることを夢見るようなことがあれば、こう自問してほしい――「これは自分が本当に望んでいることなのか? 業績向上に結びつくのだろうか?」と。


原文:From Where Should We Lead? October 20, 2010
 

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