権力争いをおさめる、一番よい方法

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 HBRブログで人気のピーター・ブレグマン。権力を使うことによって簡単に解決することがよくある。しかし、それによって副次的に失うものはないだろうか。逆に権力がなくても効果的な解決策はいくらでもあるものだ。

 

 その日、私が乗る予定だったニューヨーク~パリ間の便が遅れていた。もしかしたら欠航するかもしれない。搭乗口にいる乗客たちはいら立っている。ほとんどの乗客は不満を抱えながらも静かに座っており、時々フライト情報の画面を見上げてはブツブツつぶやいている。いら立ちながらもなすすべがないときに人が言う、「ここから出してくれ」「もう、信じられない」といった文句だ。

 ここに、小声で文句をつぶやくだけではこと足りない、あるフランス人カップルがいた。彼らが流暢な英語を話せないことは、その場の皆が知っていた。搭乗口の係員と言い争う大きな声が、周囲に響きわたっていたからだ。その態度はまるで、「私をだれ様だと思っているのか。欲しいものを手に入れるまで、ここから離れるもんか」と言わんばかりだった。

 騒ぎの理由を知るために、私は近くにすり寄っていった。フランス人カップルは航空券は持っているが、座席が確定していないことに腹を立てていて、もしかしたらその便に乗れないのではないかと心配していたのだ、とわかった。搭乗口の係員は、座席指定はできないと突っぱねていた(のちに知ったが、実際にはできたのに、そうしなかった)。フライトさえ確定すれば座席は心配ない、と係員は保証し、こう言った。「でも今は、とにかく便が離陸できるようにすることに集中しているんです。この便がどこにも飛ばない限り(このフライトが確定しない限り)、どなたも座席がないんです」。

 異なる言語のすき間で、誤解が生まれたようだ。フランス人カップルは、「あなたたちには座席がない。あなたたちはどこにも行けない」と解釈した。これでは当然、不安になるしがっかりするだろう。無力感をカバーするために、彼らは「強硬な態度に出る」という力を行使した。座席がもしあるなら、その番号をくれればいいじゃないか。それこそ私たちが欲しいものなのに――そう大声で主張するに至ったのはこういうわけである。そして係員は座席指定を与えてしまえばよかったのに、こう言って返したのだ――「No!」。

 この係員に、より効果的な対応のしかたをアドバイスすることは簡単だ。でもそれより、このフランス人カップルがどうすべきだったのかを考察するほうが有益だ。なぜならこの状況において、「誰が正しかったのか」ということと「言葉の壁」についてはいったん考えないものとすれば、あとに残るのは、我々の多くがいつも直面している問題だからだ。それは、「権力争い」と呼ばれるものだ。この場合、権力を持つのが係員であることは明らかだ。座席指定の可否は、彼女のさじ加減ひとつである。

 ときには争いごとが部門間で生じることがある。営業部はマーケティング部から何かを得ようとするが、マーケティング部はそれを与えようとはしない。そこで営業部は大声をあげ、場合によっては脅し文句も幾分交えるかもしれない。個人的な権力争いもある。1人のチームメンバーが、ほかのメンバーから何かを得たいときに権力を利用したりする。これはときどきは、うまくいくだろう。しかしほとんどの場合、こうした権力行使は失敗に終わる。

 権力争いは、特にそれが権力を持たざる者による場合、予測不能で、両者の気分を害し、横暴な行為となる。ほとんどの場合、両者の関係に大きな副次的ダメージが生まれる。無力な立場にいても、望むものを得るもっと良い方法はあるはずだ。

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