イノベーションに「近親交配」は禁物

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生物界では、多様性を持たない種や血脈は滅びるリスクが高いという。環境に不利な遺伝子が引き継がれる、変化に対して同じようにしか反応できない、などの理由があるだろう。これはイノベーションにおいても同様であるとアンソニーは指摘し、イノベーションを健全に保つ方法を提案する。


 おそらく、これは『エコノミスト』誌だけが取り上げた話題かもしれない。北米初となるゾウの精子バンクを設立する取り組みがあるという。記事によれば、この10年間に北米で生まれた多くの子ゾウの父親は、ジャクソンという名の1頭の雄のゾウである。科学者たちは、今後ジャクソンの子どもたちによる近親交配を避けるためには新たな血統が必要であると判断した。

 近親交配は、深刻な問題を引き起こす。衰弱性疾患をもたらす劣性遺伝子は遺伝しやすく、問題が世代を超えて続いてしまう。適応能力も鈍化する。今回の「冷凍ダンボ計画」は、この負のサイクルを断ち切るために、南アフリカの野生のゾウから精液を冷凍して集めることを目的としている。一般的に、異種交配は遺伝子プールに新たな組み合わせをもたらすため、その種が存続する長期的な確率を高める。

 近親交配は、ゾウだけの問題ではない。イノベーションを推進しようとするリーダーは、イノベーションの近親交配によって、そのアイデアがどの程度の悪影響を受けているか自問するべきである。多くの企業では近親交配がはびこり、当初の斬新なアイデアが退屈なものとなったり、残念な結果につながったりしているのだ。

 イノベーションの近親交配が起こるのは、その取り組みが常に生え抜き社員からなる固定メンバーによって進められている場合である。取り組みが個別の職能部門、地域、あるいは製品ラインに封じ込められていると、さらに悪い結果を招く。

 イノベーションについての研究全体に共通する1つのテーマは、飛躍的なアイデアはほとんど常に、異なる分野が交わり、互いに磨き合うようなところから生まれる、というものだ。1950年代の英国の経済学者ジョン・ジュークスによる研究を見てみよう。ジュークスは、それまでになされた20世紀の主要な発明58個のうち少なくとも46個は、「ふさわしくない場所」で起こったことを発見した。ふさわしくない場所とは、零細企業、個人、大企業の中の「はぐれ者集団」、業界内で劣位にある大企業などである。

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