オープンで、自由で、魅力的な組織をつくるには

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ゲイリー・ハメル教授がディレクターを務める「マネジメント・イノベーション・エクスチェンジ」(MIX)は、新時代のマネジメントを再発見するためのオープン参加型プロジェクトだ。2011年12月~2012年2月にかけて、官僚的組織を変革するアイデア・コンテストが開かれた。開催に先立ち、ハメル教授はブログで参加者を募集した。その呼びかけには、いまマネジメント変革で最優先すべき課題が如実に表れている。

 

 スコット・ケラーとコリン・プライスは、新刊Beyond Performance: How Great Organizations Build Ultimate Competitive Advantage(未訳:業績の向こう側――究極の競争優位を築いた偉大な企業)のなかで、企業の健全性に不可欠な9つの要素を挙げている。方向性、説明責任、モチベーション、リーダーシップ、調整と統制、外部との関わり、文化・風土、ケイパビリティ、イノベーションと学習、である。

 長期にわたって繁栄する組織は、業績の良し悪しにかかわらず常にこれらの要素に注意を払っている。ただし我々が今日直面している新たな課題をふまえると、とりわけ以下の3つが決定的に重要である。

●モチベーション

 製品・サービス、そして知識そのものでさえ、これまでにないほど急激にコモディティ化するなか、企業には高度に差別化された製品とサービスを絶え間なく生み出すことが求められている。そのためには想像力が必要となるが、想像力とは情熱の産物である。人生と同じくビジネスの世界でも、「退屈な」と「素晴らしい」を分けるのは情熱の有無である。熱意を持たない従業員からは、イノベーションは生まれない。

 みずからを徴集兵のように感じている従業員からは、大きな貢献は生まれない。ここに問題があるのだ。最近のある調査では、仕事に多くの情熱を持って尽くしている従業員は世界中でたった14%しかいない、と推定されている。こうした現状は変えなければならない。ビジネスの他の目標と同じように、情熱を引き出して貢献を最大限に高めることにも真摯に取り組み創意工夫をこらす必要がある。

●外部との関わり

 何でも起こりえる今日の経済では、顧客の嗜好は目まぐるしく変化する。予期せぬ新たな課題がいつ目の前に現れても不思議ではなく、チャンスは突然やって来てすぐに去ってしまう。ビジネス環境はかつてないほどダイナミックで、複雑で、グローバル規模になっている。そうした状況で、企業は日々蓄積される断片的でまとまりのないデータの渦の中から、意味のある洞察を引き出さなくてはならない。そのためには1人ひとりの従業員が新しいトレンドを察知できる仕組みをつくり、やるべき事が従業員のあいだで素早く認識され、必要なリソースが素早く配分される組織にする必要がある。

 大規模で官僚的な組織にありがちな、意思決定の遅延はもはや許されない。現場にいる従業員が権限を持ち、状況の変化に自動的に対応する必要がある。階級に沿って情報を上にあげていくのではなく、即時的な情報を持つ前線へと権限を委譲しなければならない。

●調整と統制

 サプライチェーンのグローバル化、生産ネットワークの分散化、プロジェクトチームのバーチャル化に伴い、調整はかつてなく重要な課題となっている。ほとんどの組織では、関係者をつなぎ留め、まとまりを維持するのはマネジャーの役目だ。彼らは各活動を、そして異なるチームやプログラム、部署どうしをつなぐ。ここには、ある暗黙の前提がある――調整を行うためには、調整者間のヒエラルキーが必要だ、というものだ。問題は、ヒエラルキーの存在によってコストが上がり、反応が鈍くなることだ。いま必要とされているのは、付帯コストをほとんど生まずに複雑な諸活動を統合する方法である。

 そして、統制の問題がある。マネジャーは通常、取り締まる側である。手順が守られているか、予算に見合っているか、怠け者が罰を受けているかをチェックして実現させるのが彼らの仕事だ。しかしこれも、監督組織を設けるとコストがかかるうえに、対象者から権限を奪って無力化してしまう。企業は規則と制裁による統制ではなく、規範を示し同僚どうしで管理し合う体勢を促進すべきである。調整と統制から生じるマネジメント・コストを大幅に削減しなければならない。

 こうした理由で、ハーバード・ビジネス・レビューとマッキンゼー・アンド・カンパニーの共催によるM-Prize(マネジメントのアイデア・コンテスト)の第2幕、The Beyond Bureaucracy Challenge(官僚的組織を変える挑戦)が開催される。以下の特徴を備えた真に人間的な組織をつくるために、知恵をお借りしたい。

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今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー