エンプロイアビリティ危機は世界的な問題である

 世界中で能力の高い人材が求められている。残念ながら、現在はそのような人手が足りていない。一部の国々では、ビジネス即戦力――これを私は「エンプロイアビリティ」(雇用されるにふさわしい能力)と呼ぶ――の養成に重点を置く教育制度を取り入れるようになってきた。しかし世界の大半の地域では、教育とエンプロイアビリティが呼応しておらず、各企業みずからが人材のトレーニングに多くの資源を投じてその尻拭いをする羽目となっている。

 IT業界のCEOという私自身の立場から、将来求められる人材について3つのトレンドが見える。そして今日から、そのような人材の育成を始めるべきである。

1. ビジネスの変革においてますます強まるITの影響力を追い風に、世界のIT産業はグローバル規模で若い人材を雇用してきた。世界中の多くのCEOは、世界経済の危機を変革の機会と捉えており、変革を導く存在としてITに注目している。

2. ITは「グローカル」なものとなった。ITによる変革を実現するためには、地理的な制約やデモグラフィー(人種・年齢・性別などの属性)の制約を超越しなくてはならない。

3. 技術革新によってITは複雑化している。厳格なコンプライアンスと事業継続性を確保するためには、再現可能なプロセスと確実なパフォーマンスがITに求められている。

 人材の雇用、開発、配置をグローバル規模で考える際、世界貿易に参加していない地域まで自由に網羅することはできない。しかし同時に、限られた国の人材だけがグローバルITの新しい需要に応えられると決めつける過ちを犯してはならない。世界各地の顧客と真のパートナーシップを築く能力を構築するうえで、「ローカル」であることは重要な要因である。

 エンプロイアビリティに関する課題は万国共通である。インドや中国でも教育機関が不足しているわけではないが、エンプロイアビリティの問題は根深く存在する。また、自国の地位復権のためには高等教育へのアクセスを拡大すべきであるとオバマ大統領が主張するアメリカでも、同様の問題がある。

 この重大な問題に対処するためには、政府、教育機関、産業界、そして学生自身の4者がそれぞれの役割を果たさなければならない。学生はテクノロジーとイノベーションがどう変革をもたらすのか、もっと理解する必要がある。4者のどれひとつとして単独では問題に対処できず、緊密に連携したアプローチが必要になるだろう。

 したがって論ずべきは、どの人材が賢いのか、雇用を保護するためにどう貿易障壁を設けるか、ということではない。国を問わず投資をしてエンプロイアビリティの高い人材を十分に創出すること、彼らが世界の舞台で活躍し、私たちの事業に効率と革新をもたらすようにすることである。才能に恵まれた教養ある若者はたくさんいる。彼らに賢明な投資をすることは、私たちの責務である。


原文:The Employability Crisis is a Global Crisis June 24, 2009
 

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