情報の提供をスピードアップする方法

前回に続いて、情報提供の迅速性について考察する。意思決定のスピードを高めるには情報提供のスピードが重要だが、プル型がいいのか、プッシュ型の提供がいいのか、あるいはある種の警告型の提供がいいのか。これらを含め、意思決定のスピードにつながる情報管理は無数の施策の統合から実現されるのだ。
 

前回のブログでは、迅速な情報提供の必要性について、SAPの共同CEOジム・ハガマン・スナーベと行った調査プロジェクトを紹介した。そこでわかったのは次のことである。企業の幹部は必ずしも、すべての情報について今まで以上に迅速に受け取る必要があるとは考えていない。しかしある種の情報については、ほとんどの幹部が現状よりも迅速な情報提供を望んでいる。

 情報をより早く提供するにはどうしたらよいのだろうか。当然ながら、この問題の解決に役立つような技術の進歩がある。たとえばSAPの「インメモリー」技術は、情報とシステムをハードドライブではなくメモリーに保存するため、検索や操作をすばやく行うことができる。また、データの検索や分析をより迅速に行える新しい形態のデータベース(たとえば、データをロー(行)ではなくカラム(列)で 保存する形式など)を開発している企業もある。インテルなどの企業は、データ分析用のパソコンやサーバーに向けた、より処理速度の速いマイクロプロセッサー(〈Intel Xeon Processor 5600〉シリーズなど)を開発している。さらに、マウスを数回クリックするだけでクエリの実行や分析を行うことができる、〈QlikView〉のような使い勝手の良いソフトウェアも存在する。

 情報提供を迅速化するために新しい技術を購入し運用するのは、比較的たやすいことだ。また、プロセスや行動、経営の変革によって、情報の提供や適用のスピードを速めることも可能だ。しかし、これには人間がかかわるため、実行が比較的困難になりがちだ。前回述べたように、こうした理由から、より迅速に提供すべき情報を特定することが重要となる。どの情報が必要か、それをどれほどのスピードで必要としているのかを理解していれば、情報創造・提供プロセスを設計し直し、必要なスピードを実現することができるのだ。

 重要な種類の情報に関しては、提供される際の柔軟性について考えることも有益である。その情報は、プッシュ型(標準的な頻度で、定型的な報告書のかたちで提供される)であるべきか、あるいはプル型(必要な時にオンラインで入手可能)のほうがよいのか。資源や保存スペース、配布コストを節約するためには当然、大半の組織では紙ベースの報告書は少ないほうが望ましい。しかし、定型報告書が電子メールで配布される場合でも、受信ボックスに放置されるかもしれない。マネジャーは必要な時に情報を入手したいと考えているため、可能な限りプル型アプローチを採用したほうがよい。詳細な報告書ではなく、特定の情報パラメーターが期待値の範囲外に出たことを示す「警告」を流すほうが有益な場合が多く、プル型プロセスを広めるのにも都合がよい。また、作成済みの報告書のデータがもはや不要となった場合は、それらを取り除くことにより、企業はITアプリケーションのポートフォリオをスリム化することが可能だ。

 プロセス変更を実施したら、IT担当者やアナリストに、本当に重要な情報をより迅速かつ柔軟に提供する機能の構築に取り組んでもらおう。幹部は信頼できるアナリストと協力して、最も迅速に入手すべき情報を特定し、警告、クエリ、報告フォーマットを作成し、意思決定に真に役立つ分析を入手するとよい。

 その次のステップでは、情報を必要な時に入手できるようにする方法を検討する必要がある。アナリストやユーザー対応IT専門担当者が、幹部に対して必要なツールの使い方を指導する。IT責任者とIT担当者は、意思決定に重要な意味を持つ情報に関して、適切なデータガバナンス、統合、即時性を確実にするよう努めなければならない。

 そして最後のステップは、当然のことながら、情報を利用した意思決定プロセスのスピードを高めることだ。十分な情報を提供してより良い意思決定を促すことが、マネジャーや専門担当者に情報を提供する目的であるということを忘れてはならない。多くの事例では、意思決定者が迅速な情報提供を要求しておきながら、得た情報を緩慢な意思決定プロセスのなかで放置している。そこで、重要な意思決定のサイクルタイムに期限を設けることにより、意思決定のスピードを速めるだけでなく、必要もない追加データや分析を要求する無駄を省くことができる。

 以上の手順はいずれも、情報の適時性や柔軟性の問題を単独で解決することはできない。しかし、すべてを実行することにより、事業のモニタリングや意思決定のサイクルを短縮し、より対応力のある柔軟な経営アプローチを生み出すことが可能だ。調査対象となった幹部が示唆しているように、これは次の不況や企業の危機に備えるうえで特に重要となる。しかし、重要な情報の迅速化を行うタイミングは、それが必要となってからでは遅い。危機に直面してからでは手遅れなのだ。また、柔軟性に欠け、提供速度の遅い情報が問題を助長することになるのは間違いない。


原文:How Do You Speed Up Information Delivery? May 26, 2010
 

Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー