新しいCEO像とは?

企業における価値創造の主役は誰だろうか。昔は組織を指揮し先導する経営陣だったのかもしれないが、いまは違う。価値創造の現場は前線にあるのだ。では、新たな「CEO」の定義と役割は何だろうか。

 

 世界中の企業が、不況後の経営建て直しに邁進している。次の不況に備えて組織を見直して強化しておこう、と考える必要がなかった事業体、機能、プロセスはほとんどないだろう。

 波紋を広げるかもしれないことを承知で、1つ質問をしたい。見直しの一環としてCEO自身の役割や責任のあり方を変えよう、と考えたCEOはどれだけいるだろうか?

 製造業が強かった時代には、CEOや重役からなる「支配層」が、企業戦略、方針、品質管理プロセスを決定し事業に最も多くの付加価値をもたらしていた。しかし、今や価値創造の主役は支配層から組織ピラミッドの下層へと移っている。細かく分化された商品どうしが際限なき競争を繰り広げる時代にあっては、「何を売るか」よりも「どう売るか」が重要だ。したがって価値創造が起こる場所は、従業員と顧客が接点を持つ最前線へと移っている。それにより、既存の組織構造は時代遅れになったのだ。

 それでは、新しいCEOの役割とはなんだろうか? CEO個人の能力・技量が最大の付加価値となるよう努めることだろうか。あるいは、この新しい「価値創造層」の中心で何らかの役目を果たすことだろうか。私が思うように後者が正しいのであれば、私たちCEOはみずからのリーダーシップのあり方を再考し、現状により即したものを取り入れる必要がある。

 従業員が「自分たちは権限を与えられ、影響力を持ち、1人ひとりが変革を推進するリーダーである」と思えるように後押しすること――これこそがCEOの新しい役割であると、私は確信している。新しいCEOはワンマンであってはならない。価値創造にこだわるチームプレイヤーとなり、すすんで協働し、新しい草の根のリーダーたちを見出し育てることができる者でなくてはならない。

 組織の前進をみずから指揮・先導することがCEOの役目であった時代は、過去のものとなった。もちろん、リーダーとしての体裁を保つことまで放棄すべきではない。しかし肝心なのは、次のような点でバランスを取ることである――体裁を保つことと、責任を負うこと。人を動かす際に権力を行使することと、アイデアを提案すること。組織の代表として外部へ発信することと、組織内で価値創造層の声を代弁すること。

 今やCEOは、「チーフ・イネーブリング・オフィサー」(Chief Enabling Officer)へと変身を遂げるべきである。そして前線の価値創造層で尽力している従業員に権限を与え、励まし、熱意を引き出さなければならない。

 あなたもそう思うだろうか?


原文:Who Is the New CEO? July 6, 2010
 

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