『レスポンシブル・カンパニー』刊行記念
訳者が語る 【第3回】
「責任ある企業」へのいざない

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前回前々回の記事で、地球環境に対する負荷を小さくすることも企業の責任だと自覚し、その責任をしっかり果たそうと考えた結果、パタゴニアが「なるべく買わないでくれ」と訴えたことを紹介しました。では、そこまで「責任」とまじめに取り組んでいるパタゴニアが考える「責任ある企業」とはどういうものでしょうか。

 パタゴニアは、オーナー、社員、顧客、地域社会、自然という5種類の利害関係者に対する責任を全うする形で事業を展開すべきだとしています。

「ん~、つまりCSRか。それならウチもやってるよ」……そう思う方もおられるでしょう。CSRとは"Corporate Social Responsibility"、つまり「企業の社会的責任」を意味する言葉で、日本でも、大手企業を中心にCSR報告書を作成するところが増えています。でも、パタゴニアはCSR報告書を作成していません。

 実はパタゴニアも、CSR報告書を作ろうとしたことがあります。でも、通り一遍のものにしかならず、これではあまり意味がないとやめてしまいました。CSR報告書には善行しか記載されず、事業活動の結果、どれほどの環境被害を発生させているのかなどは書かれないからです。もちろん、善行がないよりあったほうがいいわけですが、その先には、事業を進めるために必要だと考えられている「必要悪」の削減があるはずであり、必要悪を削減したければその現状を公表し、可視化する必要があると考えたわけです。

 CSR報告書の代わりにパタゴニアが公表しているのがフットプリント・クロニクルです。オンラインショップの製品販売ページにも掲載されており、製品ごとに、どこでどのように作られているのかのほか、「良い点」と「悪い点」、そして、パタゴニアとしてどう対処していくのかなどが確認できます。

「良い点と悪い点、両方を示す」という姿勢、好感を持つ人が多いのではないでしょうか。高額商品を買う場合など、インターネットで口コミやユーザーレビューを確認する人が多いと思うのですが、それもひとえに、メーカーの製品紹介や売らんかなの販売員からでは良い点の情報しか入らない、悪い点の情報も欲しいと思うからでしょう。

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