ビジネスヒーロー若干名募集

外部環境が厳しくなると、ヒーロー待望論が台頭する。いまがまさにそうで、過去のパラダイムが通用しなくなったなかで、変化を言い訳にせず時代を切り拓くヒーローが必要なのだ。これらの人々は、意外と組織の前線から表れる。

 

 英雄(ヒーロー)とは、困難な局面において登場するものである。

 歴史を紐解けば、真の英雄が登場したのは、特に厳しい時代であったことがわかる。名を挙げるなら、マハトマ・ガンジー、マーティン・ルーサー・キング、ネルソン・マンデラなどの指導者たちがいる。彼らは困難な状況に立ち向かい、偉大なことを成し遂げたからこそ英雄と称えられているのだ。

 英雄たちの活躍の場としてなじみ深いのは、軍隊とスポーツだ。これは、常に尻込みしたくなるような挑戦に向き合うことが彼らに求められるからである。英雄たちは「危機的シナリオ」とでもいうべきものに対する備えができており、技量と勇気で勝利をあげる。

 しかし、ビジネス界にこの英雄論をそのまま持ち込むのは時として難しい。ハーバード・ビジネス・スクールで20年以上にわたってビジネスの世界を詳細に考察してきた、ボストン近郊のバブソン・カレッジ学長のレナード・シュレジンガーの好評著書にThe Real Heroes of Business(真のビジネスヒーロー)がある。実は、同書のタイトルには、"...and not a CEO among them"(ここにCEOは誰ひとり含まれていない)と続くのである!

 それでも、こういう時代にはビジネス界にも真のヒーローが求められている。もし、今日のビジネス界にヒーローが現れるとすれば、どこを探せばよいのだろうか。もちろん、経営層ではない。過去にも主張してきたように、ヒーローが現れるのは前線だ。現代のビジネス界に登場する真のヒーローは、潮に逆らって泳ぐときにも加速しようとするような人々だ。彼らは、業績を向上させる新しくて革新的な方法を発見し、世界が業績不振の言い訳を探しているときに目標を上回ってみせる。

 こういう人たちの共通点は、プレッシャーに屈しないということだ。彼らは研ぎ澄まされた集中力によってのみもたらされる冷静さで、いとも簡単に不可能を可能にしてしまう。

 タタの小型車〈ナノ〉のエピソードを例にとろう。この小型車を開発した人たちは、その過程で困難に直面しただろうか? 答えはイエスだ。設計から技術の結晶を生み出すまでの、あらゆる段階で困難に見舞われた。最近では元々西ベンガルにあった工場の移転を余儀なくされたこともあった。それでも、そこには多くのヒーローがいて、あきらめることを拒み、どんな逆境も乗り越えて発売にこぎつけたのである。

 今こそ、彼らのようなロールモデルから学ぶべき時だ。今こそ、業績を次のレベルに押し上げ、成し遂げることに集中し、言い訳を探す代わりに革新的なアイデアを求める時だ。

 誰しもが、根っからのマルチタスク人間となっている。このような時代に求められるのは、多くのことを成し遂げることか、それとも最も重要なことの達成に集中することか、自問すべきなのかもしれない。中国の故事成語に、「二兎を追う者は一兎をも得ず」というこの状況を簡潔に表したものがある。たった1羽のウサギでも、捕まえるためには技を磨く必要がある。ウサギの逃げ足が速すぎると泣き言を言っているひまはない。

 こんなご時世でも気概を示せる人々は、目の前の仕事に長けているだけではない。成功者としてのキャリアに繋がる確かな足がかりを築いて、将来を確実なものとしているのだ。彼らは、いずれ晴れわたる空に輝く星となるだろう。


原文:Looking For a Few Business Heroes April 20, 2009
 

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