イノベーターは悩むものである

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イノベーションのプロセスにおいて悩みはつきない。かつてロザベス・モス・カンター教授は「途中では、何もかもが失敗に思える」という「カンターの法則」を生み出した。これにめげてはいけない。乗り越えるためのヒントを紹介したい。

 

「信念を持ちつづけなさい」。これは私が、信頼の危機に瀕しているクライアントにかけた言葉である。彼はこの夏の間、机上の計画では有望に見える成長事業について、方策をいろいろと検討していた。しかし、ありがちなことだが、分析すればするほど彼は疑いを持つようになっていった。自分の分析を上級役員に説明すればするほど、多くの質問を受けるはめになり、成功への疑念を抱かれるようになってしまったのだ。

 これまで実践したことがない何かに取り組んでいるときには、入念な分析をすればするほど、そのプロジェクトを「進めるべきではない」理由が明らかになるだろう。これは当然のことだ。市場の需要の正当性は立証できないのだ。専門家が技術上の仮説を受け入れなかったり、パートナー企業との議論が行き詰まるなど、信頼の危機を生み自信の喪失を招く種は常にある。ハーバードのロザベス・モス・カンター教授はそうした現象を数多く目にして、「カンターの法則」を生み出した――「途中では、何もかもが失敗に思える」。最初に新しい構想が浮かんだときが、興奮の頂点である。だがそのアイデアを詳しく検証すればするほど、目の前に横たわる課題が次々と見えてくる。悩めるイノベーターに、次の言葉を贈りたい。

イノベーターには、溢れんばかりの信念が必要だ。

 大きなアイデアに取り組んでいる、という自分の直観を信頼するのだ。自分をただ無条件に信じるということではない。たとえば私は、成功したイノベーションに見られるパターンに関する根拠ある研究と、自分が現場で得た経験を組み合せ、簡単なチェックリストをつくった。あるアイデアにどれほど可能性があるかを判断するときに、このチェックリストを活用している。特に、そのアイデアの背景に良いストーリーがあるかどうかに注意を払う。アイデアの根拠となるストーリーは、たとえ反論の余地があっても必ずなくてはならない。

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