愚直に「責任」を考え続けてきた会社

最近、企業の社会貢献というテーマが「きれいごと」でなくなった印象があります。バブル期には多くの企業が、フィランソロフィーを標榜しました。その後、CSR活動が花盛り。ただこの頃の企業にとっての社会貢献とは、利益の一部を社会のために使うという、利益と社会活動のトレードオフの考えだったようです。
この流れを変える大きなインパクトをもたらしたのが、戦略論の第一人者、マイケル・ポーターです。かつて「5つの競争要因」「バリューチェーン」などの概念を提唱し、企業戦略を考える礎を築いた立役者です。その影響力はいまなお、これらに代わる戦略論が登場しない現実からも推し量れます。
そのポーターが2011年に提唱したのが、「シェアード・バリュー」(共有価値)という概念です。企業が求める経済価値と社会価値はトレードオフではない。経済価値を目指す企業活動が社会価値に結びつくという概念です。戦略論の大家から出てきたこの概念は、瞬く間に世界中に広がり、多くの企業に衝撃を与えました。なぜならポーターの命題は「競争優位で他社に勝つ」ことだと思われていたからです。
経営学の流れを先取りしていたかのような企業が、アウトドアウェアのパタゴニアです。アウトドア好きの読者なら同社のイメージは明確でしょう。製品のよさは折り紙つきですが他社製品より高い。お店で購入してもパッケージはいたってシンプル。それでも憧れの対象になる製品を生み出すのが、パタゴニアです。
新刊『レスポンシブル・カンパニー』はそのパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードが自ら実践してきた経営理念をまとめたものです。自然を愛するイヴォンが作った会社だけあって環境への配慮は徹底しています。製造委託をする下請け企業の工場にさえ、環境保全のための対策を求めます。どれだけ売れている商品も環境負荷が高い資源が使われていると分かれば、すぐさま新たな素材づくりを始めます。こうして生まれたのがオーガニック・コットンです。
書名の「レスポンシブル」とは「責任ある」という意味ですが、同社は環境のみならず、地域や従業員に対する責任を愚直なまでに追求し、いまの経営スタイルにいたりました。ここまでたどり着くのは容易でなく、その試行錯誤の過程までも描かれているのが本書の魅力です。
本書を読んで「やっぱりパタゴニアは素晴らしい」で終わるのはもったいない。彼らの試行錯誤こそ学ぶべき対象でしょう。経営者の皆さん、ならびに将来経営の一翼を担いたいと考えている人にこそ読んでもらいたい一冊です。あわせて社会起業家の皆さんには、先達の知恵として参考になることの多い本だと思います(編集長・岩佐文夫)

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