イノベーションにまつわる4つのウソ

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イノベーターたちは、イノベーションにまつわるウソに騙されないよう対処する必要がある。発言する本人は正しいと信じているのだが、実際は真実ではない。

 

ウソその1:ターゲット顧客が言う、「もちろん、私はこれを買いますよ」

 新しいアイデアに取り組んでいるイノベーターが試作品を顧客に見せて、「購入意思」を評価してもらうことがよくある。だが、未来の行動を知らせることにおいて、顧客の仕事ぶりはひどいものである――斬新なアイデアについて語る場合は、なおさらだ。私がお手伝いしたある企業では、これまでにない新しいアイデアについての市場予測の正確性は、おおざっぱにいうと、乱数発生器を使った場合とほぼ同程度であることがわかった。

 そうではなく、言葉より行動を信じなくてはいけない。これからするつもりだ、と人々が言うことは無視しよう。彼らがすでにしていることに目を向けるのだ。いま現在、問題を解決するのにお金や時間を費やしていないのであれば、今後もそうしない可能性がある。そのかわりに、試作品に対して顧客にお金を払ってもらう方法を検討するとよい。プロクター・アンド・ギャンブルの最高技術責任者ブルース・ブラウンと私の論文「イノベーションの成功率を高めるシステム P&G:ニュー・グロース・ファクトリー」(邦訳DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2011年10月号)では、同社が「取り扱い学習実験(TLE)」と呼ぶ仕組みをつくって、新しいアイデアをできるだけ正確に評価するための取り組みについて説明している。

ウソその2:開発担当者が言う、「6カ月あれば出荷できると思いますよ」

 心理学の研究分野に「計画錯誤」(planning fallacy)という素晴らしい用語がある。基本的に、人間はある仕事を遂行するのに必要な時間あるいは金額を推定することが、ひどく苦手である。たとえ以前にその仕事をした経験があったとしてもだ。製品開発担当者は納期通りに開発を終えようと固く決意しているのだが、何事も常に当初の見込みよりも時間がかかり、コストがかかる。いま私が観察しているあるプロジェクトは、当初18カ月で出荷の予定だったが、現時点で3カ月遅れている。

 このウソに対抗する最も簡単な方法は、開発のパラダイムを変えることだ。アジャイルソフトウェア開発を参考にして、1つの長い開発サイクルを回すのではなく、多くのサイクルを短期間で回すようにする。新製品の発売にあたって、最初からすべてを盛り込もうとはせずに、スティーブン・ブランクが言う「必要最低限の機能を備えた製品」(Minimal Viable Product)から始めるべきだ。つまり、実際の市場でテストするのに十分な程度であればよい。

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