欠点を逆手にとって売り物にする

 先週の金曜日、私はムンバイでおいしいインド料理を食べながら同僚と話をしていた。彼は最近読んだ新手の観光戦略についての事例を説明してくれた。

 豆カレーを食べながら言う。「その地域は、自らを“エコツーリズム”としてブランド化しているんだ。エアコンやテレビ、そしてルームサービスもない部屋に宿泊させて、300ドルも請求する。部屋で蚊に咬まれたって、それは自然を味わう貴重な体験! というわけさ」

 エコツーリズムを標榜するホテルは、多くの欠点や欠陥(設備が貧弱で、蚊が飛んでいるような部屋)を反対にアピールポイントにして、価格プレミアムを設定している。「インドに限られるけどね」と同僚はにやりと笑った。

 だが実際は、欠点を売り物に変えてしまうという方法は、ソフトウエア業界では昔から行われている。「それはバグではなく、仕様です」というのは、少なくとも1980年代中頃からおなじみだ。バグを仕様にしてしまうのも、破壊的イノベーターを目指す人には重要なスキルである。

 破壊的イノベーションの核心は、意図的なトレードオフである。シンプルさ、利便性、低価格といった名のもとに、性能や出来栄えを犠牲にすることだ。このトレードオフに喜んで応じる顧客を見つけることがポイントである。そうした顧客は既存のソリューションを、高価すぎる、あるいは複雑すぎると思っている。

 言い換えれば、「破壊的」というのは、ほぼ常に戦略の選択肢に入る。破壊的イノベーションを目指す企業は、自社のターゲット顧客に注意深く関心を払う必要がある。

 たとえば、プロクター・アンド・ギャンブルが販売する手軽な掃除用品〈スウィッファー〉(訳注:〈クイックルワイパー〉の類似商品)を考えてみよう。もしこれを、「掃除は念入りに」という従来の概念にとらわれている消費者に売り込もうとしていたら、どうなっただろうか。そうした消費者は、水を使わない掃除用品を欠陥品と見なしただろう。実際、スウィッファーは発売当初、掃除の際には水を使うのが不可欠と思われていたイタリアのような市場では苦戦した。

 代わりにP&Gは、手軽さを歓迎する消費者に狙いを定めた。なぜならそうした消費者の選択肢は、徹底的な掃除か短時間の掃除か、ではなく、短時間の掃除か、そうでなければまったく掃除をしない、ということが多かったからだ。便宜的な掃除という「欠点」は、手軽さを求める消費者にとっての「仕様・特徴」となったのだ。

 2000年に初めてスウィッファーを手にした私の妻は狂喜した。やる気のない掃除仲間(私のことである)を手伝わせるのに足る、お手軽なものだったからである。子供が生まれてからは、P&Gが子供も一緒に掃除ができるようにと考えてスウィッファーをつくっていることに気がついた。私の2歳になる娘もスウィッファーを手にしてご機嫌である。

 欠点を売り物にするには、市場を新たな視点でとらえ、目に見えない顧客を見つけることが求められる。その手がかりとして、次のような問いかけが役立つであろう。

・自分のコンセプトに対抗する他の選択肢・商品は何か
・どの点が他の選択肢・商品より良いのか
・どの点が他の選択肢・商品より悪いのか
・既存の選択肢には手が届かないと思っている消費者はいるか
・既存の選択肢を利用するには問題がある、という状況はあるか

 今度あなたのコンセプトについて誰かから「欠点がある」と言われたら、その欠点を特徴だと見なすような顧客を探し出して、問題点をひっくり返し、アピールポイントにしてみてはどうだろうか。

原文:Featuring the Flaw February 18, 2010 

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