非連続の中の連続(2)
「できる」と「する」の間にある深い溝

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連続性の確保

 イノベーションの条件が非連続性にあるとしても、それが徹頭徹尾非連続であれば、イノベーションにならない。供給側の提案を世の中が受け入れて初めてイノベーションになる、という第二の条件を満たすのが難しくなるからだ。

 あらゆるイノベーションは非連続性と連続性の組み合わせでできている。このミックスをどうつくるかがイノベーションの成否の決め手となるといってもよい。航空業界のように一見成熟していて、すべてが出来上がっているようにみえる業界では、あらゆることが連続的にしかでてこない。背景が連続性で出来上がっているといってもよい。だから連続的な背景の上にどのような非連続性を描くが勝負になる。すでに話したように、LCC(ローコスト・キャリア)の元祖、サウスウェスト航空は、連続の中に非連続を持ち込んだという成功例だ。

 前回話したように、アマゾンはインターネットの非連続性をうまく活かした商売を構想して成功した。単純に本やおもちゃやソフトを売るのではなく、これまでになかったような「顧客の購買意思決定のインフラ」を提供する。単純に言えば「売り場のイノベーション」だ。モノが売れるかどうかは今も昔も売り場によって大きく左右される。最高の顧客接点としての売り場をつくる。これは小売業にとって永遠のテーマだ。これまでとまったく違う売り場をつくる。そこに徹底的にフォーカスして、非連続な価値を実現した。ここにアマゾンが凡百のEコマースの会社と違いがあった。

 しかし、アマゾンが身を置くインターネットの世界、もう少し限定していえば、Eコマースの業界は、航空業界とは逆にそもそも背景が非連続性に満ちている。インターネットという基盤技術それ自体がきわめて非連続な性格をもっているイノベーションだ。航空業界とくらべれば、非連続性を見つけることは相対的には容易だといえる。

 このことは見過ごされがちなだが、アマゾンのイノベーションの妙味は、そもそも非連続的な背景があるところに、ある面では連続性を確保したことにある。そこに一定の連続性があるからこそこそ、世界中の大勢の顧客が喜んでアマゾンのユーザーとなった。アマゾンの意図したイノベーションは、世の中に急速に受け入れられた。だからこそ、イノベーションになり得たわけだ。人々の目を奪うような非連続な機会があふれているときこそ、「非連続の中の連続」に目を向けることが大切になる。

 アマゾンが創業した当時、インターネットは降ってわいたようなビジネス・オポチュニティだった。インターネットという技術の非連続性にターボをかけて、ひたすら非連続的なビジネスを追求した会社も少なくなかった。その典型例が「本はもはや過去のもの」と考えた人々だ。

 これは、そもそも「本を売る書店」という小売りのスタンス自体が古い、というスタンスである。インターネットの登場で「本」(=紙に印刷された活字)というメディアは早晩駆逐される。だからまったく新しい、非連続なメディアを考えたほうがいい。手間のかかる在庫や物流を必要とする本よりも、データをインターネットにのせてそのまま届けたほうがよっぽど合理的だ。しかも、コンテンツは活字だけではもったいない。デジタル技術を使えば、映像も音声も統合したような(当時の言葉でいえば)「マルチメディア」なコンテンツにこそ新しい時代の価値創造があるだろう。

 こうした考えで、「スーパー飛び出す絵本&映像&音声」のようなきわめて新規なコンテンツやメディアをつくって売ろうとするベンチャーが雨後の筍のように現れた。しかし、そうした企業はすぐに消えてなくなった。当たり前の話だが、顧客が受け入れなかったからだ。

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