内なる力を引き出す
モチベーションという名の船の旅

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 われわれはいつも前向きではない。接近と回避のモチベーションの相対的強さでいえば、リスク回避の後向きの気持ちのほうが強いものだ。それを上手にセルフ・コントロールして、いくらかでも前向きにとらえられればよしとすべきだろう。進むにしても退くにしても、それがきちんと自己コントロールできること。これがモチベーション・マネジメントの第一歩だ。

 次に、方向性を問題にするとすれば、それは直感的に、船の操舵装置(舵)や自動車のハンドルのようなものを思い浮かべるかもしれない。が、それだけではない。船の方向性を決める舵取りについては、たくさんの可能な航路のなかから1つを選んでいく、選択と集中にかかわる認知的メカニズムである。

 そのためには、操作する舵の向きだけでなく、航路全体を見渡すための海図と、現在地点を判断するためのGPS(全地球測位システム)や羅針盤・六分儀などの役割を、合わせて考えることが大切だ。操舵は、状況認識と意思決定という知的プロセスなのである。だから、イメージやコンセプト、目標などがもたらす知的作用が、スキル(操舵技術)より大切になるものだ。

 ただし、仕事における活動では、大航海時代のように、大まかな海図と羅針盤による不正確な測位に頼った、あいまいな意思決定を迫られることも多い。だから、行く先もわからず途方にくれ、潮に流され大海原で漂流するようなことがないよう、しっかりと方向を決めていくことが大切なのだ。

 最後に、長い航海を成し遂げるモチベーションの持続性については、航海の途中でときどきに寄港し、食料と燃料を補給するように、中間地点でたびたび喜びを感じ、緊張をほぐし、気力をもちなおす経験が必要である。

 純粋に内発的動機に導かれていれば、たった1人で、ひたすら開発やプログラミングや制作に没頭し、仕事の喜びを堪能するということがあるかもしれない。しかしわれわれは、見てくれる人も、評価する人もいないような「真空」状態で生きているわけではない。

 純粋に「内発的動機」で始まった活動であっても、外からのかかわりのない真空状態であれば、長続きしないものだ。だから、その活動を最後まで踏ん張って、やり遂げるために、内側と外側の両方からの報酬を受けることが大切なのである。

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