内なる力を引き出す
モチベーションという名の船の旅

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 モチベーションの方向性には、ものの考え方―「認知」の働き―が大きく影響している。目標は、われわれの意識を1つところに集中させる。スポーツにおいて、大会や記録面での目標を設定すると、それに向けて選手の努力が集中していくことはよく知られている。マーケティング的にいえば、コンセプトの設定が行動に方向性を与えるということだ。

 マネジメントのなかでは、意識的に設定した目標が、人を動機づけることも知られている。たとえば、企業の人事評価制度の根幹を握っている目標管理制度(MBO)。目標面談を通して、部下に今期中に達成すべき目標を決め、取り組ませる。目標が人を動かすという性質を活かしている。

 日常の仕事では、いくつかの課題が並列し、複数の目標が同時に活性化されている。そのなかで、どれを選んだらよいか選択がむずかしいことがある。利益と確率による合理的な期待値計算によって、行動選択を行うことが妥当だと思われている。しかし、理性的判断がよい結果につながらないこともある。それは、モチベーションのような精神的リソースを考慮に入れていないからだ。

 精神的リソースには限りがある。だから、望まない活動や乗り気でない目標に向けて、意識して努力することは、モチベーションを激しく消耗する。同時に、単調さや倦怠感もまた、精神的リソースを枯渇させる。これでは、目標達成には至らないこともあるだろう。だからこそ、選択肢や活動の幅を狭めて、リソースを集中的に配分するのがよい。

モチベーションの持続性

 第3のモチベーションの持続性とは、行動の源となる力をどれほど持続してもち続けられるのかを示すものである。一言でいえば、持久力のようなものだ。

 持続性は、モチベーションの3つの次元のなかで、実はもっとも大切な要素である。というのは、地道にコツコツと努力することのほうが、短期集中型の働き方よりも、意義のある成果に結びつきやすいからだ。

 モチベーションを持続させるには、「報酬」が大きな役割を果たしていると考えることができる。われわれが継続的に何かの行動を取り続けるよう行動形成が行われるためには、そのときどきで報酬を得る必要があるからだ。

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