不満渦巻く人事評価改善の方策
連携せよ!左脳的評価と右脳的評価

5

 比較のために申し添えれば、360度多面評価について、マイケル・ハリスとジョン・ショーブレックがメタ分析(これまで公刊された多数の研究結果を集めて、高次〈メタ〉に集計分析する方法)した結果では、本人の評価が他者同士(上司と同僚の間)で一致する程度を相関係数で示せば、その値は0.62である(相関係数に詳しくない方であれば、この値が1.00に近づけばよいと思っていただきたい)。

 自分と上司との評価の一致度はもっと悲惨で、相関が0.35である。自己評価と上司評価はほとんど合わない。だから、「上司の目は節穴か」という嘆きにも、“科学的”根拠がある。

 一方、筆者が『人事評価の総合科学』(白桃書房 2010年)のなかで調べたオリンピック・フィギュアスケートの採点の分析では、評価者間の評定の一致度は恐るべき高さだった。ソルトレークシティ五輪ではその一致度が0.89~0.92、トリノ五輪では0.89~0.90であった。つまり、オリンピックの採点は、マシンのような正確さで一致しているのである。このデータはどう解釈すればよいのか?

 残念なことに、採点競技が注目されるにしたがって、採点疑惑も多く取りざたされるようになった。2008年のバンクーバー五輪でも、金メダルを獲得したキム・ヨナ選手(韓国)と、銀メダルに終わった浅田真央ちゃんとの間に、23.06点という大差がついたことが話題になった。それを受けて、国際オリンピック委員会ジャック・ロゲ会長は、「現行ルールに基づけば正しく採点されていた」というコメントを出し、疑惑の火消しに追われなければならなかった。

 ただし、研究の成果からすれば、オリンピック審判員の採点は、恐ろしいほどの一致度を見せている。「人が人を評価する」といっても、まるでマシンのような正確さだ。記録を争うオリンピックだからこそ、人間による評価の限界に挑戦しているといってよい。

 だから、なにかと不満の多い人事評価も、オリンピック採点競技に学ぼうと努力すれば、たくさんの「カイゼン」をすることができる。職場の人事評価であっても、評価の限界にチャレンジできるのだ。

次のページ  グローバル時代の評価の課題»
COGITANS 関連記事
世界のエグゼクティブが注目する話題の新シリーズEI Emotional Intelligence  知識から感情的知性の時代へ 待望の日本版創刊
定期購読